5-93 手に手を取って
霧雲山が統べる地に御座す、国つ神。魂鏡社にて、宴を楽しまれた。酒は憂いの玉箒。
人は話し合いの末、助け合うことに決めた。祝辺の守が睨みを利かせている。背く愚か者は、いない。
乱雲山の妖怪たちは、考えた。悪意のような、悪しき妖怪。アンのような、悪しきモノ。他にもイロイロ。このままでは、いけない。
悪い隠は、祓い清める。許し無く墓場から出れば、直ぐに魂を剥がし、滅する。
この度の戦。悪しきモノによる、謀だった。人は弱い。欲深く、脆い。だから容易く、騙される。
良い隠なら、地を守る。祝や妖怪とともに、国つ神に仕える。中には地の神となり、人に求められなくなるまで、見守る隠も。
すべての隠が、祝辺の守のようなら良いが・・・・・・難しいだろう。隠だから、強い力を持つわけではない。守が、他と違うだけ。
人々の住む地を、御守りくださる。天つ神も、国つ神も、清らかな隠も。
「魂を剥がす。」
「剥がし、祓い清める。」
「ここまでは、良い。」
三妖怪、頷く。
「フクは。」
「祓い清めるが。」
「弱い。」
・・・・・・。
「そもそも。」
「乱雲山には。」
「・・・・・・ツウ。」
ハッ!
「ツウが行くなら、コウも来る。」
「コウなら、何があってもツウを守る。」
「隠の世や、妖怪の墓場へ連れて行き・・・・・・?」
「強い力は、ある。」
「あるが、その力。」
「祓い清めるのか?」
事情を説明し、試すことに。結果、失敗。フクにより、祓い清められた。ツウは落ち込んだ。気の毒なくらい。見かねたコウが抱きしめ、言った。
「いつか、きっと、多くの命を救うよ。ツウなのか、ツウとオレの子、孫なのか。誰にも分らないってだけ。」
「いつか、多くの命を?」
「そう。」
ニッコリ笑って、言い切るコウ。ツウは嬉しくなった。私には救えなくても、コウとの子が・・・・・・。
そ、そうよね。私たち、誓ったもの。コウが十二になったら、契るって。そしたら、生まれるわ。コウに似た男の子かしら。それとも女の子?
「ツウ?」
「ありがとう、コウ。私、とっても幸せ!」
乱雲山編でした。
良山編へ続きます。お楽しみに!