5-91 ポイしましょう
話し合いの末、決まった。
玉置と北山。豊田と川北。四つの国へ、食べ物が分けられる。ゆとりのある国や、村から。
玉置と北山は、特にヒドイ。そのため、作付けの手伝いも行う。手伝い、だ。終われば、帰る。
東山は、人手が足りない。食べ物を出す代わりに、手伝いが来る。来て、帰る。
「なるようになった、か。」
化け王の臣下、ブラン。話し合いの場に、コッソリ潜んでいた。もちろん、誰も気づいていない。
化け王が繋いだ闇は、残されたまま。暴れ川から来る異物は、獣たちが頂く。
風見は知らない。しかし、そろそろ気づくはず。
「よかったな、エイ。」
「ポコさま。ありがとうございます。」
全てを聞き、ホッとした。話し合い、助け合うことに決まったのだ。
戦には、ならない。けれども、攫われる子が増えるだろう。良村と馬守、狩り人たち。何があれば、動く。目を光らせている。
もし。その時は、迷わない。一人でも攫えば、火口へ吊るす。縄が切れれば、それまで。命が奪われれば、獣谷の仕置場へ。
「守。ただいま、戻りました。」
「米、稗、粟、麦。集めさせ、置いた。野比、野呂、谷河。少しづつ、運ぶ。」
「はい。その・・・・・・。」
「申せ。」
「山守にも、少し。」
「ならぬ。欲しくば、田畑を広げよ。」
ぐうの音も出ない。
下がった地に、山守。上がった地に、祝辺がある。
遥か昔、地が割れた。頂の辺りから水が吹き出し、住めなくなった。
住めないが、守らなければ。鎮め森の際、頂きの前へ、山守社を移した。
山守の村は小さい。住めないからと、祝辺に押し付けたのだ。ずっと、ずっと昔の話。
山守が去ってすぐ、水が引いた。祝辺は豊かで、広い。戻ろうにも、戻れない。隠の守が許さない。
足りない分は、祝辺から譲ってもらう。飢えるほどではないが、もう少し。そう願ってしまった。
玉置や北山と同じ、か。『足りなくなる前に、もっと』と、求めてしまった。
つくづく、嫌になる。これでは前の長、父と同じではないか。私は、違う。違う。違う。
届けられた食べ物により、多くの命が救われた。作付けの手伝いに来た人たちは皆、優しい。
残された人たちは思う。戦好きな、長を変えよう。強くて、穏やかな人を長に。そうすれば苦しむことも、奪われることも無い。
戦狂いなど、いらない!