19-25 はむっ
和音と清和の働きにより、中津国にある冀召の家は禍津国にある光の柱と、いつでも行き来できる事が明らかになった。
「はわぁん。」
和に触れられ、恍惚とする和音。
気合を入れたのだろう。大きな体で突っ込み、そのままドドドと登り詰める。
でドン。
「冀召の水が無くなるかと思った。」
オビスが微笑む。
「空にね、光の帯が見えたよ。」
シロが尾を振る。
家から飛び出し、腹から着水。ドォォンと大きな音がしてザァァッと水が落ちた。
ノビる和音、呆れるブラン。その上に虹が現れシロ、大興奮。
「隠騒がせな蛇だ。」
鎮森の民だけではない。祝辺から、とつ守。山守からはカヨが、水筋を通って駆け付けた。
「日和ん、ひどぉい。」
「何だ、その呼び名は。」
と言いながら二歩、日和が後退る。
大和は烏で和泉は梟、日和は鶴と揃って鳥。和泉は夜行性なので、話し合うのは日暮れ前。
集まるのは冀召の東、山桃湖の北西。裏白樫の大木。
集まり、そろそろ。そんな時、和音が水柱を上げる。
「いやぁ、驚いた。」
和泉がクリンとした目を輝かせ、ジィィ。
「これはハム。豚の肉を塩漬けにして、燻した物よ。タルシェの豚は味が良いから薄切りにして、そのまま食べられるの。」
「はむっ。」
ジュルリ。
これまでもアンリエヌの美味しい物が食卓に並ぶ事はあった。けれど、その多くは保存食。
見るからに美味しそうなハムに心惹かれたのは和泉だけでは無い。お行儀良くしているが、大和も同じ。
「みんな揃ったし、夕餉にしましょう。」
「はぁい。」
禍津国に放り込まれた和音は、目についた物を来る日も来る日もパックンごっくん。
スケスケだった体が色づき、黒くなって真っ黒になって禍禍しくなって、何でも融かせる体を手に入れる。
が、味なんて覚えてイナイ。全て同じだと思っていた。
「おいひぃ。」
あぁ和さま。和音の心と体だけではなく、腹まで御掴み遊ばすなんて・・・・・・好き。すきスキ大好き。
「人の姿に化けても、変わらないのね。」
日和が呆れながら、魚のフライをパクリ。
「おいひぃ。」
あぁ和さま。日和の心を優しく包み、お腹まで幸せにしてくださるなんて。・・・・・・好き。
大和もオビスもシロも、初めて食べる料理に興味津津。
「あぁ。」
オビスはジロから『頬が落ちるホド美味しい』ハムの話を聞いて、『面白い事を言うな』と思った。けれど口にして、その意味を知る。
「これがハムなんだね。」
ウットリ。




