19-23 クローバーを植えよう
な・ぎ・さ・ま。
あぁん、ウットリするホド心地よい響き。和音を骨抜きにするナンテ、もうっ。メロメロですわぁん。
「冀召の家を社にすれば、中津国に居る大和たち。こちらへ来られるのかな。」
和が首を傾げる。
「それは難しいと思います。」
デレデレしていた和音が真面目な顔になり、微笑んでから言い切った。
「禍津国は死んで、隠になった者の国。生きている者が足を踏み入れれば、何かを口にすれば戻れません。」
和音は思った。この幸せをズッと、ズッと噛み締めたいと。
和さまの身に何が起きたのか、どんなに考えても分からない。けれど禍津国まで迎えにいらっしゃった、というコトは分かる。だから清和は許す。
他の使わしめは、何とかナルとしても嫌だ。
「和音は戻れたわよね。」
ドキリ。
「というコトは大和も。」
ショボン。
和は思った。
大和は山越烏。猛禽類ではナイけれど、猛禽類のような食べ方もする。蛇が恐れてもオカシクないと。
烏は雑食性。昆虫や果実の他にトカゲやカエル、小鳥の卵や雛も食べる。大形種になると小獣も捕食する一方で腐肉食の傾向が強い。
大きなモノを食べる時は足で押さえ、嘴で食い千切る。
あまった食べ物を残しておいて、後で使用するなど学習能力が非常に高く、適応性が大きい高等生物なのだ。
海岸に打ち上げられたモノを漁ったり、ゴミ捨て場を漁ったりするが、そういう習性なのだから仕方がない。
「うん。冬を越せるダケの食料は確保できたし、クローバーを植えようかな。」
右手で拳をつくり、左の掌にポンと打って微笑む。
「和さま。クローバー? は、食べられるんですか。」
清和が問うた。
「牛や馬は喜ぶわよ。花は白くて小さくて、葉は三つ。四つ葉を見つけると幸せが訪れる、なんて話も聞くわね。」
「いっぱい植えて、四つ葉を見つけましょう。」
清和が目を輝かせる。
クローバーはヨーロッパ原産。
茎葉は栄養価が高く、牧草として利用されるマメ科の多年草。根につく根粒菌は空気中の窒素を固定し、土地を肥やすので休耕地などにも植えられる。
因みに、稲作の緑肥用として栽培されるレンゲソウは中国原産。
稲刈りの少し前、灌漑を止めた頃にバラ播き春、花盛りの頃に田に鋤き込む。こちらはマメ科の二年草。
「楽しそうね。」
「はい、楽しみです。」
キャッキャ、ウフフする和と清和。
「和さま、きっと幸せにします!」
和音、キリッ。
「ありがとう。皆が幸せに暮らせるように、これからも力を尽くすわ。」
あぁん、和さまぁぁ。
和音は和さまの御考え、し為さる事を妨げるモノが現れたら消します。迷わずバクッと飲み込んで、ジュッと融かしてブリブリ出します。
ってイヤン、恥ずかしい。
「・・・・・・和音?」
元の姿に戻りクネくねクネ、くぅねクネッ。




