19-19 育て! 緑よ
あの輝き、あの強さ。清めと守りの力だけではない。もっと強い何かに包まれている。
「素戔嗚尊、お鎮まりください。」
御怒りだ。静かに御怒りだ。
「母さ、ま。」
ゴクリ。
「もう、お忘れか。」
エッと。
「あの光、柱が立っているのは霧雲山の真下。」
「・・・・・・あぁ。」
思い出した。
あの守り袋、どんな事をしても手に入れる。小さいの、幼子は犬から離す。
家が出来たら呼ぶ、とか言っていたな。けっけぇ。ヤッてヤルぜ、大きいのを。家の前に。
姉さま、怒ってたなぁ。他にもイロイロやったけどさ、岩穴に、洞に閉じ籠る事ナイじゃん。
まっ、何とかナッタけど。
「あの柱に、いいえ。社から出る事、許しません。素戔嗚尊。今すぐ、御戻り遊ばせ。」
「そ」
「ソンナもコンナもありません。」
気の所為か? 伊弉冉尊の御頭に、角のようなものが。
「け」
「けれど、何ですか。」
クワッ。
どうしてソンナに御怒りなの。
あの守り袋があれば母さま、人の世へ戻れます。父さまと話し合って、仲直り出来ます。なのに、だから、だから欲しかったんだ。
一年に一度で良い。向き合って、手を取り合えば昔のように過ごせます。
御力を合わせ、数多の神を御産み遊ばしたのでしょう?
「宜しいか、素戔嗚尊。」
唇をグッと噛み、泣き出しそうな御顔を為さる。けれど母神は眉一つ動かされず、御待ち遊ばす。
「・・・・・・はい。」
いいよ、待つよ。待ちますよ。
『全て整いましたら御招きします』と言ってたし、隠だし。ドコにでも居る隠なのに、あんな力。
はいハイ、わかりました。待ちますよぉ。でも覚えておけ、隠。禍津国から放り出してやる。
「足りないのは水と栄養。発酵させた枯葉を鋤き込むか、緑肥用のマメ科の多年草を。ってアレ、外来種よね。」
ブツブツブツ。
「良く無いわ。でも、ちょっと待って。ここ亜空間、いえ異空間。並行世界?」
・・・・・・まっ、いっか。
不毛といっても差し障りない、そんな土地を緑化するため土壌調査を実施。いろいろ判明したので田畑を作り、品種改良した植物の種を撒く。
苗木も植えた。
「育て! 緑よ。」
生物系、促進の才を揮う。
「オォーン。」 ソダテェェ。
才は特質系、物質系、生物系の三系統に分れる。中には禁忌の才も存在するが生物系、促進の才は植物の生長を早めるもの。
同じ生物系に増大があるが、こちらは禁忌の才。生命体の数を増やして大きくする。けれど、その寿命は短い。
とはいえ数十年は生きるのでジョド大王、支配の才を持つ最後の大王は積極的に活用した。
・・・・・・カー化け王に命じて。




