19-17 折角だし
着る物はある。住む家も出来た。次は食べ物!
「この土、痩せすぎ。不毛ってホドじゃないけど殺風景、じゃなくて雰囲気がある。」
円柱の外は今も、そんな感じ。
「折角だし、実習用地を緑化しよう。」
和、ノリノリ。
「そうしましょう。」
清和、尻尾フリフリ。
一体、いつ実習用地になったのか。
それは扨置き、腰に撒いていた肩掛を強化。風の才で浮かせ、清和を抱き上げ腰掛ける。
「行くよ、清和。」
「はい、和さま。」
フワリと浮上、ゆっくり発進。いざ、土壌調査へ。
シュタタタタァ。
「申し上げます。」
恕の隠頭、投が首を垂れる。
「どうしたの、そんなに慌てて。」
ニッコリなさる伊弉冉尊。
「御社の東に、とても大きな光の柱が現れました。」
ここは伊弉冉社。
中津国、人の世だと津久間の統べる地。その真下。
「その柱、清らなのかしら。」
「はい。強い清めと守りの力が込められており、近づく事も出来ません。」
恕は忍び。人生を達観して死んだ、女の隠を中心に構成。
その拠点は人の世、喰谷山にある。
主に人の世で活動しているが伊弉冉尊公認の隠忍びなので、どんな隠でも恕と喰谷に入山すれば浄化可能。
そのまま合繋谷の滝壺から禍津国へ行ける。
「伊弉冉尊。『和』という名に、お心当たりは。」
ドキッ。
「右牙滝で『和音』と名乗る白い大蛇が、それはもう嬉しそうにクネクネして居りました。」
それ和音、喜びの舞デス。
あぁ、思い違いでもカン違いでも無いわ。和神の使わしめよ、その蛇。
「他には。」
「はい。霧雲山、嗚山の国守クウが見たそうです。地涯滝の近くで朝日のように輝く髪と、ナギの花のような目をした幼子の姿を。その傍らには化け王の臣、ブランさまが。」
その幼子、和神ね。
「続けて。」
「はい。鎮森の民、オビスから言われました。『強い力に守られた、ナギの花と同じ色の目をした幼子はジロの孫。話し掛けられるまで動くなよ』と。」
和はアンリエヌ国、化け王だからね。基本的に魔物の従者、ブランやネージュたちが付いてマス。
気軽に話し掛けて良い御相手ではアリマセン。
「ジロの孫。」
熊に襲われて死にかけた時、化け王に助けられたトカ。
「伊弉冉尊。ジロの孫は命を落とし、禍津国に来たのですか。祝の力を持ったまま。」
「いいえ、少し違います。ジロの孫は化け王となり、西の果て。テンカイで神と御為り遊ばしました。禍津国へは、飼っていらした御犬を迎えに。」
「・・・・・・その御犬に、何か。」
あったのですね。




