19-16 和は、まだ気付かない
和は少し、ほんの少しドキドキした。
先代が残した和専用安全装置が作動して、コレである。
「乗り掛かった船よ! もう後には引けないわ。」
鼻息が荒い。
「空気ヨォシ、水ヨォシ、光なぁい。なら作ろう。」
無いなら作る。有ったらイイナを形にする。今の和には、その力がある。
「地下空間で太陽を創るとタイヘンな事になるから、太陽に似た球体を造りましょう。」
うんうん。
太陽は巨大なガスの塊。
中心部における、原子核反応から得られるエネルギーにより発光する。
「うぅんとぉ。青い炎を出す気体を閉じ込めて、それをボッと燃やす。より先に器が要るよね。」
ポスンと座って膝を抱え、ウンウン唸る和。オロオロする清和。
「考えるな、感じろ。」
理性との戦いに感情が勝利。
両の掌を上に向け物質系、創造の才で小さな球体を出す。
その中に水素と酸素、水蒸気を除いた釜戸山の火山ガスを注入。クルクル混ぜたら球体を、より大きな球体の中へ。
時の流れを倍速、その倍速と早めて様子見。
中心部に熱が溜まり、高温になった。
水素の原子核が互いに衝突し、核融合反応を起こす。やがて火がともり、発光。
「やったぁ! 出来たよ、お日様。」
正確には太陽もどき。
「生き物の生長には月も必要。」
キリリ。
「半分、覆おう。十二時間は出して、十二時間は隠す。うん、月っぽい。」
昼は光源を見せ、夜は光源を天井に反射させる。月とは違うが暗くは、なるね。
「この調子でドンドンいってみよう! 緑を増やすよ。と、その前に。」
川を造る時、引っこ抜いた木の根をシュパッ。枝打ちしてからクルクル皮むき。切り株を集め、適当な大きさに切断。
薪も材木もキレイに積み上げた。
「これダケあれば、うん。大きな家が建つね。」
と言いながら大岩をバコッと割り、冀召に建てた家の真下に配置。
「やまとは地震が多いから石造より木造、地熱の事を考えて高床式。屋根は大きく、でも軽く。」
と言いながら台石の上に柱を立てて床を張り、面取りをした三角柱の校木を横に組む。
「出来た。」
建てられたのは三軒。校倉造の大きな家と食糧庫、コの字型の物置。
物置には材木の余りや薪がドッサリとある。
「和さま、あれは何ですか。」
鼻を上げ、クンクンする清和。
「雲かな。」
深く考えずに広範囲を浄化。光の壁で囲い、天と地を閉ざす。
つまりココは巨大円柱の中。
中津国から水を引いたが、貯水槽の水は才で増やした。
おそらく空間内に気流が生じ、空気中に含まれる水蒸気が変化。浮かび上がったのだろう。
「わぁぁ。」
和さま、スゴイ。
和は、まだ気付かない。遣り過ぎた事に。




