19-15 翼が無くても
冀召の真下に社を建てる許可を取り、清和を連れて移動中。
「和さま。」
「なぁに、清和。」
「翼が無くても飛べるんですね。」
いやいや飛べないよ。和はね、化け王なの。
物質系、強化の才で肩掛を強化。チョコンと座って清和を抱き寄せ、風の才を使って移動しているダケ。
「化け王だから、いろいろ出来るの。」
「そうなんだぁ。」
キラキラキラキラァ。
清和、少しは疑う事を覚えよう。
確かにイロイロ出るよ。けれど人とは違う生き物に、はじまりの一族に生まれ変わりました。
カーの血で全細胞が入れ替わり、遺伝子が組み替えられ、人では無くなりました。
はじまりの一族として生まれ、全ての才を収集した化け王カー。その血を残そうにも、残ったのは才を奪われた一族。
次代を望めない。
不老不死だからとノンビリ構えていたが、天界と冥府から仕掛けられた。何とかしようにも何ともナラナイ。
ダメ元で予知した結果、祝の力が必要だと判明。
「化け王って何ですか。」
知らないよね。
「アンリエヌを統べる王よ。」
「オウ?」
「そう、王。」
あっ、そうだ。和さまの父さまの父さま。ジロさま。オビスとシロを助けて、オビスに名を付けた狩り人。
シロにシロって名を付けたのはオビス。山の犬は山、里の犬は里で暮らすもの。だから名付けなかったって。
和さまは清和って、名付けてくださったヨ。
「この辺りカナ。」
中津国、人の世。オビスが畑に手を入れ、シロが土竜を遠ざけている。
「着いたよ、清和。」
フワッと着地し、清和の背を撫でる。それから肩掛を元に戻し、腰に巻いて仁王立ち。
「先ずは浄化。」
左手を腰に当て、右手を上げてニコリ。
「うわぁ。」
アッと言う間に一帯を浄化。見渡す限りピッカピカ。見えないけれど光の壁で覆われ、天も地も塞がれてマス。
「お次は水ね。滝にしたいから、エイッ。」
特質系、土の才で作ったのは滑り台のような山。その頂点の真上に穴を開け、泡湖から水を引く。
「滝だぁぁ。」
ドドドドドォォォ。
霧雲山系の中心に聳えるのは山守山。頂があるのは祝辺で、冀召と大泉の間にあるのが泡湖。
大泉と比べると小さいが、その貯水量はナカナカのモノ。けれど後でシッカリ、キチンと塞ぎます。
「川を造りましょう。」
水を循環させるため特質系、俯瞰の才を揮う。次に土の才で放射状に掘り、波紋上に繋ぐ。それから台の下にある貯水槽へ流れるよう、微調整。
「こんなモンかな。」
うんうん、イイ感じ。
解るよ、清和。そりゃポカンとするよね。顎、外れそうになるよね。




