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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
台石編
1602/1619

19-13 一から育て直しましょう


なぎさま、和さま。そんなに御怒り遊ばさないで。清和きよなは和さまの、花が咲いたように笑う御顔が好きです。




「クゥゥン。」 ナギサマ、ワラッテ。


血塗ちまみれになった清和が、とても悲しそうに訴える。


「清和、ごめんね。出してあげる。」




てのひらを下に向け、スッと横に動かした。と同時にさくの一部が抜け、入口を作る。




「清めましょうね。」


水の才で洗い、火の才で乾かし、風の才で毛並みを整えた。これら全て特質系。最後に清めの力をふるい、浄化完了。


「さぁ、入って。」


鏡の中から清和のむくろを取り出し、微笑む。


「入る?」


キョトン。


「今のままではおにになる事も、生まれ変わる事も出来ないわ。だから一度ひとたび、骸に戻って隠になりましょうね。」


「ハイ、和さま。」


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何のうたがいも持たず、おのの骸に戻った清和。からっぽだった骸に、そのたましいが戻った事で光輝ひかりかがやく。




「痛くない! 体が軽い。傷も無い。和さま、ありがとう。迎えに来てくれて、はらい清めてくれて。ウルッ。ありがとう御座います。」


クゥゥン、すりすり。




感動の再会を前に『良かったね』と涙する亡者もうじゃたち。中には膝をつき、祈りをささげる亡者も。




素戔嗚尊すさのおのみこと。」


グッチャグチャになった塊を前に呆然ぼうぜんと為さる一柱の神。






火産霊神ほむすびのかみ産んで死んだ私を追って、禍津国まがつくにまで来てくださった。嬉しかったの。


直ぐには戻れなくて、『決して見ないでくださいと』お願いしたわ。なのに、なのに、なのにぃぃ。



追いかけたわよ。『よくも見たな』と、『裏切ったな』と思いながら黄泉平坂よもつひらさか坂本さかもとまで。


あの男! 千引ちびきの岩を引きえて言ったわ。別れの言の葉を。




悲しかった。怒りで周りが見えなくなった。でも落ち着いて返したの。


いとしい夫である、あなた。ナゼそのように酷い事をおっしゃるの。それがまことであるなら私はこの先、あなたの国に住まう人を日に千づつ、くびり殺します』と。



で、帰ってきた言の葉。


『愛しい妻である伊弉冉尊よ。あなたがソレをするなら、よろしい。私はこちらの国で日に千五百の人の子を産ませるため、千五百の産屋うぶやを建てましょう』と。






「・・・・・・ハァァァ。」






阿波岐原あわきのはらみそぎで身につけて御出でになった物を全て、御捨てに。ケガラワシイと御捨てに。


海水うみのみずに御体を沈められ、大きく御身を振られ、汚れを落とされた。みそぎは続き、多くの神が生み出された。



禊の終わりに両の目と、鼻を御洗いに。


そうしてあらわれ出たのが天照大御神あまてらすおおみかみ月読尊つくよみのみこと、素戔嗚尊の貴い三柱みはしら






「この子に罪は無い。」


禊で生まれた子。いつまでっても幼いまま、体だけが大きくなった私たちの子。


「一から育て直しましょう。」


それで変わるとは思えないのが、つらいわ。


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