19-12 出すよ、本気
清和の背に跨り、固く閉じられた吻に禍津国の食べ物をグイグイ押し付け、押し込もうとする禍津神。
御名を素戔嗚尊。
「ヒエッ。」
気付けば周囲に、折られた木が突き刺さっていた。天井は無いが、有っても無くても檻である。
「ナッ、何事。」
和が怒っている。それはもう、激しく怒っている。
烈火の如く怒る、その姿は覇王そのもの。
素戔嗚尊が清和の背から退き、木に御触れ遊ばす。が、遅かった。
「ギャアァアァア。」
ワリと強めの電流が流れていた。
和が蹴り折り、投げたのはタダの木ではない。特質系、転化の才により鋼鉄に変えてある。それを円形にドスドス打ち込み特質系、雷の才で電流を流す。
強さは高圧から低圧まで思いのまま。
「伏せ。」
支配の才、発動。
「フギャッ。」
ゴンッ!
電気柵を掴んだままビリビリ為さった禍津神は、膝を折った状態で腰を落とされた。言うまでも無い事だが、『伏せ』とは俯せの事。
はい、その通り。額がパックリ割れました。
「アァァッ。」
正座したまま後方へ仰け反り、絶叫。
「ヴッ。」
特質系、操作の才で重力百倍。バキバキと骨が折れ、見開く。その目は恐怖に染まり、割れた額から血が噴き出す。
頭部には血管が多く、少し切ったダケで大流血。けれど意識があり、叫ぶ元気があれば放置していても大丈夫。
すっ転んで頭を打ち当て、救急車で運ばれた酔っ払いをトイレに押し込み、落ち着かせるじゃない? アレと同じよ♪
「ぁ・・・・・・ゴフッ。」
視界の隅に清和を捕らえ為さり、御手をヒクヒク。その瞬間、容赦ない重力攻撃により内臓破裂。
カーも和も平和主義者。仁義を軽んじ、武力や権謀を用いて国を治める事をヨシとシナイ。が民が、臣が虐げられれば話は別。
出すよ、本気。
「清和に何をした。」
処置するツモリだった。が、考えが変わった。燃やぁす。骨も残さず、燃やぁす。
「アッ、アッ、アッ。」
紅蓮の炎を掌に出し、怒り狂う幼女を見て失禁。
もうダメだ。目を閉じた、その時。
「化け王! 和神、御鎮まりください。」
伊弉冉尊が御声を張り上げ為さった。
母神の登場にホッと為さったのか、素戔嗚尊が御気を失い遊ばす。が、それで許すホド和は甘く無い。
グシャッ。
神で在らせられる。ミンチになっても圧延されても、暫くすれば元の御姿に戻られる。ハズ。
「あぁっ。」
無情。




