5-87 井の中の蛙
この国は、やまと。大きな島らしい。島ってのは、水に囲まれた、小さな陸だ。火山島、珊瑚島、陸島とか、あるらしい。
海の向こうには、やまとより大きな島、大きな陸がある。化け王の国は、ずっと西にあるそうだ。
オイオイ、聞いてるか? シッカリしろよ。
化け王の国、アンリエヌから離れた地にある、ローマって国。戦好きでな。とんでもなく広い地を、治めてるんだってさ。
戦に関わること。道とか川とか、土や鉄、石とか使って、整える術と技。掟や仕組みを整えて、暮らしやすくする力。そんなモノに優れている、大きな国だ。
あちらこちら戦を仕掛けて、ドンドン大きくなってるんだとよ。
ローマだけじゃないぜ。ギリシア、エジプト。ペルシア、インド。
海を挟んだ所。大きな陸の東にある、漢。他にもいろいろ。戦、戦で滅んじゃぁ建て、滅んじゃぁ、建て。ブクブク大きくなってんだと。
そんな国がだ。攻めて来たら? 西の大国を攻めるより、東へ。海を越えてって。
なぜ、無いと言える。考えるかも、攻めるかもしれないだろう。
チマチマやってて、良いのか? 海の向こうから攻めてこなくても、風見は必ず攻めて来る。
風見だけじゃない。ずっと離れた地には大王ってのがいて、広い地を治めてる。
これは、どんなだか知らん。けどな。もし戦になったら、負ける。
バラバラじゃねえか。山裾の地だけで、このザマ。どうすんだ? 付き合いのある村には、手を貸すぜ。けど、オマエらは、ねえな。
良く考えろよ。裏切る気でいるヤツに、誰が手を貸す?
「聞いてるか、聞こえてるのか。」
北山、豊田、川北、東山。四人の長が見合った。それからすぐ、くりかえし頷いた。
「玉置の。」
・・・・・・。
「オイ! なに、ボンヤリしてやがる。」
「人、人が、足りない。・・・・・・攫う、か。」
「オレの聞き違いだよな。玉置、何だって?」
「足りないんだ!」
シゲは思わず、玉置の長を締め上げそうになった。
「タツと同じだな。守り長、コイツどうする。」
地を這うような、低い声。
「早稲の件から、見直された。私が言えるのは、ここまでだ。」
北山、東山、川北、豊田、三鶴だけじゃない。武田、飯田の長まで、真っ青。
「おかしくなったのか?」
玉置の長に、三鶴の長が問いかける。
「オイ。オイ。」
北山の長に肩を揺すられ、叫んだ。
「足りないんだ!」