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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-86 教えてやる


確かな話だ。知らないだろうから、教えてやる。風見かぜみ大国おおくに。山裾の地にある国なんて、村と同じだ。


そうだな。玉置、三鶴、北山、東山を合わせて、風見一つ。どうする? 勝てるのか、風見に。


早稲わさ。あれは、しぶといぞ。村だがな。武田と飯田を合わせて、早稲一つ。そんな所だ。



早稲の社の司に聞いた。オレたちが早稲を離れてぐ、カンの良いヤツらが言ったそうだ。どっかが攻めて来ると。


備えてたんだとよ。だから村のヤツラ、多くが山に逃げ込んだ。人は減ったが、戦える。どうする?


戦慣れした早稲が、戦好きの風見に手を貸した。これが、どういうことか、分かるよな。


山裾の地なんて、血の海さ。海ってのはな、塩の湖だ。広い、広い、だだっ広い、それが海。



心に浮かべてみろよ。血が流れすぎて、むくろが沈むんだ。血はな、赤いから。水と違って、透けない。踏み入れるとな、抜けなくなるんだ。沈んだ骸が縋るように。


どうした。考えが及ばないか?


戦ってのは、殺し合いだ。勝っても負けても、骸の山さ。風見だぜ、勝てるのかい? 腐っても早稲だぜ、勝てんのかい? 早稲は戦い慣れている。アンタら、どうだい。ただ好きなだけだろう?



怯えても変わらない。風見は再び、攻めて来る。このたびは化け王が加わって、助かっただけ。


祝辺の守は強い。が、な。守り切れない。霧雲山の統べる地を治めるのは、神。霧雲山を治めるのは、祝辺の守。そう決めたらしい。だから、当てにするな。



村を、国を守るのは長。組むことはあっても、守るのはおのれの地。ゆとりがあれば、手を貸す。そうだろう?




風見だけじゃない。南にはな、もっと大きな国がウジャウジャしている。暴れ川の上に豊かな地が、なんて知れ渡れば。なぁ?


そんな顔したって、何も変わらないぜ。オレは良村を守る。この度の戦で学んだからな、良山ごと城にする。攻めて来るのを防いで、守りながら戦う為の築き物だ。山城って呼ぶらしい。



戦は遊びじゃない。アンタらは知らないんだ。戦に出るってことは、死ぬってことだ。生きて帰れるなんて思えない、それが戦場いくさばさ。


傷つけたくない、奪いたくない。それでも逃げられない。なぜだか、分かるよな。戦好きな長ってのは、どれも同じコト考えやがる。そうさ。言いなりになるしか無い、そう仕向けるんだよ。


離れたくなかった、けど、残さなきゃいけなかった。守りたい人を守るために、長の命に従う。そむけば、奪われるからな。



長ってのは、守らなきゃならない。村でも国でも同じさ。そこに暮らす人たちを、何が何でも守り抜く。そのために命を懸けるのが、長だ。


アンタら、あるのか? 心構え。無いよな? 全く。あったら戦なんて仕掛けない、仕掛けられるワケない。守らなきゃいけない人を死なせて、どうする。



食べ物が足りないなら、譲ってもらえるように頼めば良かったんだ。困ったときは、お互い様。話し合えば、分かり合える。言の葉が使えるんだ。なのにアンタら、奪うことしか考えない。



こんな狭い地でゴチャゴチャ、ゴチャゴチャ争って、どうすんだい。奪うことしか考えられないような長に、誰も従わない。オレは嫌だね。

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