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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-85 早稲のようには



シキ、怒りで唇をワナワナさせて。このままでは。でも、どうすれば。シゲは焦り、考える。


妹を奪われたんだ。シマ、だったか。殺されたアツと誓いあって、契りの宴を控えて。釜戸社の裁きにより、あの三人は死んだ。憎い敵が死んでも、心が晴れることは無い。



早稲わさの長たちの家にあった品を、釜戸社へ持って行っただけ。言い逃れ出来ないだろうと、決して逃さないと、そんな考えで。シキだけじゃない。あの場にいた、奪われた人たち。みんな、泣いてた。


オレの妹も。セツは病で死んだ。守りたい人を守れなかった。その思い、痛いほど。




シキが立ち上がり、拳を振り上げた。



許せない。人を物扱い、しやがって! 妹シマと、弟になるアツを奪われた。二人は誓いあっていた。契りの宴を控え、幸せそうに笑っていた。なのに。


釜戸社の裁きにより、早稲だと分かった。裁かれ、仕置が執り行われた。憎いかたきは死んだ。なのに、まだ・・・・・・。


はらわたが煮え繰り返る。人を何だと思っているのだ。人手が足りないから、譲れ? 手伝って欲しい、助けて欲しい。それなら分かる。でも、違う。違った。違っていた!




「馬守の。落ち着け、座れ。」


シゲに言われるまで、気づかなかった。立ち上がり、拳を振り上げていた。


「すまない。ありがとう。」



シキが落ち着くのを待ち、シゲが話す。玉置、北山、豊田、川北、東山。五人の長の、目を見てから。



「アンタら、食い物に困ってんだろ。病も広がって、バタバタ死んでんだろ? どうすんだ。」


・・・・・・。


「戦なんぞせず、助けを求めりゃ良かった。違うか。」


・・・・・・。


「早稲と同じだ。ああ、なりたいか?」



早稲が今、どうなっているのか。玉置と三鶴の長は、知っている。攻め入ったのだから。


今、攻められたら。玉置の国は滅ぶ。それもアッサリと。そして三鶴、もしくは豊田に奪われる。



「ち、違う。」


玉置の長が、震えながら言った。


「何が違う。」


「そ、れは。その・・・・・・。早稲のようには、なりたくない。」


「早稲のように、か。確かにそうだな。でもオマエら、なるぞ。早稲のように。」



このままでは早稲と。いや、もっと酷いことになるだろう。働き盛りの男と、若い娘を攫われ、残ったのは幼子と年寄り。


家を失い、田も畑も荒らされた。食べる物がない。生き残った早稲の村人は、「早稲の他所の」人と呼び、蔑んでいた人たちが残した、早稲の村外れにある、崩れそうな家で暮らしている。



「早稲はな、風見かぜみと組んだ。」


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