5-83 考えとは?
「その通り。」
川田の長が言った。
「為来りを守れないような村は、助けない。」
ハッキリと大きな声で、蔦山の長。
「どうせすぐ、裏切る。」
アッサリ言い切る、馬守の長。
「い、いいや。そんなことは」
北山の。慌てるほど、知られるぞ。裏切る気だったと。
「信じられませんね。ウチ、攻められましたから。」
岩割。守り切ったが、幾人か死んだと聞いた。罵り、叫びたいだろうに。怒りを抑えて・・・・・・。
川田も岩割も、攻められた。すぐに勝ったが、傷ついた者もいる。決して、許せない。そもそも、戦を好む国なんて助けたくない。祝辺の守が言うから、話し合うことにした。それだけ。
川田は攻め、蔦山は守り。どちらも強い。戦を嫌い、備えている。
川田は繋がり、蔦山は固め。馬守は、その間。他の村との繋がりを持ちながら、守りを固める。良村も同じ。少し、蔦山寄りか。
玉置、北山、東山、川北、豊田、三鶴。戦好きが考えるコトなんて、同じ。助けたって、すぐに裏切る。そういうモンさ。
「たっ、すけ、あうために、な。」
玉置の長、必死である。
「そ、そうだ。それで、集まった。」
オマエが言うか?
今は助けてもらうために、形振り構わず。そんな所だろう。最も危ういのが、玉置と北山。少しでも多く譲ってもらわなければ、滅びる。
奪おうにも人が、作付けしようにも人が。病に苦しむ人だらけ。嬰児は死に、残った人は衰え、弱っている。おまけに種籾がない。食べてしまった。
「祝辺の守が仰った。『助け合い、話し合って、生きよ』と。」
「守が下されたのだ。背くのか、三鶴。」
「我らにも、考えがある。」
北山、東山、玉置。揃いも揃って、何を!
「考えとは。」
シキの声が、低い。
「力尽くで奪い取る、か?」
岩割のセキ。争い事を嫌い、備える、良い長だ。
「守は、はじめに仰った。『決して、戦を起こしてはならぬ』と。続いて『助け合い、話し合って、生きよ』と。」
子に言い聞かせるように、シゲが言った。伝わるだろうか。
「どうやら、祝辺の守の思い。此奴等には、届かぬようだ。」
守り長が、軽く横に首を振った。