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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
154/1570

5-81 裁きって


「何にでも、“為来しきたり”が、ある。」



ずっと黙って聞いていたシゲ。凄んだわけではない。ただ静かに、おさとして言った。


それまで好きに騒いでいた、六人の長たち。玉置、北山、東山。川北、豊田、三鶴。蛇に睨まれた蛙のように、動けなくなった。



しばらく誰も、何も言わない。言えない、のだろう。あの早稲わさから虐げられ、生き残った人たちが作った村。その長が放った重い、重い言の葉。


集まった長たちとは、何もかもが違う。同じであるワケがない。




「黙ってないで、何か言え。戦を仕掛けたんだ、腹を括るしか無い。違うか?」


・・・・・・。


「それでも長か。」


・・・・・・。


「地が震えて、家が燃えた。冬だからな、倉に燃え移ったんだろう。でなきゃ、奪おうなんて考えない。」


「そ、そうなんだ。だから、悪くない。」


急に明るい声を出し、北山の長が言った。


「タツと同じか? 考えろ。悪いんだよ、奪うのは。」


地を這うような、低い声。



「戦を仕掛けた長と倅。残らず、裁きを受けろ。」


いつもの声に戻し、シゲが言った。多くの長が頷き、守り長を見る。カイが話そうとした、その時。


「さ、裁きって。なぜだ、誰も殺してないぞ。」


玉置の長が叫んだ。



戦なんて、殺し合い。勝っても負けても、必ず誰か死ぬ。いつだって弱い人たちが、何も悪いことをしていない、そんな人たちが殺されてしまう。


戦場いくさばへ行けと命じれば、その手で殺していなくても、殺したことになる。なのに、コイツ。



「何を言ってやがる。戦を仕掛けたんだ。殺したんだよ、長。オマエが殺した。」


・・・・・・。シゲに言われ、黙り込んだ。



「オレは長だ! 守らなければ。」


気づいたと思ったのに、違ったようだ。言い放ち、踏ん反り返っている。


「確かに、玉置の長はアンタだ。今は、な。」


「これからだって、死ぬまで長だ。」


「なら、決まりだな。祝の許しは要るだろうが。」


・・・・・・?


「釜戸山か、獣谷か。お決めになるのは、祝だ。」


「・・・・・・えっ。」


助けを求めるように、カイを見た。


「良村の長の言う通り。釜戸社の、祝の裁きを受けてもらう。玉置だけではない、戦を仕掛けた長、全て。」


霧雲山から来たのは、山守の長。祝辺の守ではない。つまり、釜戸山の守り長が、この場を仕切る。




「ま、待ってくれ、下さい。守れるのは、ワシしか。だから、その。」


「その、何だ。東山の。」


カイはシゲのように、低い声が出せない。ただ、それだけ。


「倅はまだ、幼い。ワシが治めなければ、東山は。」


優しい声だから、許されるとでも思ったのか?



「守り長。少し、言いたいことがあるんだが。」


カイがシバを見て、頷いた。


「東山の。なぜ、逃げられると?」



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