18-2 守れるなら、どんな事をしても
ナタはジロとしか外出しない。璨は出不精、ではナクおうちダイスキっ子。
お使いを担うのは悪意や敵意など、禍を齎すモノを弾く力がある單。
「おや、早かったね。」
璨にも單にも見える目は無い。けれど、その姿を見せているオビスとシロは別。
「また狙われたの?」
木の実を採りに行く。そう言って出掛けてから、そんなに経ってイナイ。
「うん。まぁ、いろいろ。」
山守の民は減り、風通しも日当たりも悪い村は荒れ果てた。結果、生き残りは山越を目指す。けれど受け入れられず、そのまま森で死ぬと聞く。
山越の民も減っている。山守の民が持ち込んだ、いや散蒔いた病が流れたのだ。生き残りは恐れた。
病によって起こるアレコレが、その体に現れた者を見て。
村外れに移り住んだ者の中には山越で生まれ、山守を嫌って近づかなかった者も居た。けれど親、その親は山守の生まれ。
「死んだの?」
サラリと恐ろしいコトを。
「・・・・・・だと、思う。」
オビスもシロも他の隠やら何やらを遠ざけ、守ってくれている。だから、だろうか。他の人より森に入る事が多い。
初めは怖がって泣いた。けれど優しい目をしているし、不用意に近づかない。鎮森で暮らす心優しい隠と犬だ。そのうち慣れた。
「また来たのね。」
水を操る力を生まれ持った璨は姉、ナエを見て思った。力を強めなければアブナイと。
「懲りないなぁ。」
アレコレ弾く力を持つ單でも、この手合いはドウしようもない。
「で、採れた?」
甘い木の実。
ジロが村外れに建てたのは高床式住居、森の中に作ったのはツリーハウス。どちらも囲まれると逃げられないが今のところ、何の問題もない。
ナタには先読の力、夜ごと泊まりに来る樹には先見の力があるから。
「あっ。」
木の実を入れた籠、森に置いてきちゃった。
「取りに戻るのは、アブナイわね。」
オビスに見つめられ、しょんぼり。
「また取りに行こう。」
「そうね。」
見つめ合う夕とナエ。
ナタは思う。このまま何も起こらず、ずっと幸せに暮らせれば良いのにと。
ナエを産んで先読の力を失った。だから何も、どんなに望んでも分からない。それでも、これから起こる事は覚えている。
「こわい。」
ナエと夕の末の子が、とても強い力を生まれ持つ。その力は鎮森に守られるのに、あの子は命を落とす。死んでしまう。
「どうして。」
強い力を生まれ持ったダケなのに、それダケなのに狙われるなんて。襲われるなんて信じられない。
「守りたい。」
守れるなら、どんな事をしても守りたい。けれど変わる。ドンドンくるくる、ガラリと変わるの。




