5-77 外事
霧雲山の統べる地での戦は、終わった。負けた国では、多くの人が飢え、死ぬ。
このままではいけないと、国や村の長が釜戸山に集まって、話し合うことに。
釜戸山からの使いが来る少し前、鷲の目が来た。ちょっと寄ってみた、と言って。もちろん、ただ寄ったのでは無い。
祝辺の守は、聞いてしまった。山裾の地が、戦場になると。
高い地にある村は、城を築く。山にある村は、強い。苦も無く、山城を築くだろう。
日吉山、釜戸山、乱雲山。川田、馬守、岩割、良村。皆、良く備えていた。
特に、良村。戦い慣れているだけでなく、敵を良く知っていた。
「祝辺の守よ。この度の戦から、学べ。」
化け王から言われたこと、すべて。思い出し、考える。
霧雲山の統べる地は、早稲や風見のある南の、低い地に比べると、暮らしやすい。安らかで、穏やか。
血の気の多い国はあるが、争うのは国。小さな村は他の村と組み、大きな村を作った。仕掛けられても、退けられる。
しかし、続かない。霧雲山の統べる地へ、攻めて来る国が増える。
風見は知った。暴れ川の上に、豊かな地があると。早稲は知っている。鳥の川の上に、豊かな地があると。そして・・・・・・風見が早稲と、組んだ?
いくら祝辺の守でも、霧雲山の統べる地すべて、守ることは出来ない。
敵を知らなければ、戦えない。他の地にも、敵がいる。そんなことは、当たり前。なのに、気づかなかった。のほほんと呆けて・・・・・・。
このままでは、いけない。備えなければ、知らなければ。そのためには、戦い方を。違う。今この時、何が起こっているのか。知らしめなければ!
「良村の戦い方を聞いて、思ったんだ。他の長たちに、外のこと。話してくれないか?」
木菟も鷲の目も、霧雲山の統べる地から、ほとんど出ない。出ても恐れ山の火炎社か、神成山の渦風社。稀に南の地へ行くと、必ず慄く。
風見の国は大きい。玉置や三鶴など、早稲と変わらない。早稲は村だ。その村と、この地の国は同じ。
ブランが言った。この地は化け王の才により、救われたのだと。きっと、次はない。
祝辺の守の仰せだから、ではない。己で考え、決めた。隠れ里、良村。霧雲山の統べる地を選んだ、強者たち。話せるだけ、それだけで良い。話してもらおう。
「外のこと、か。」
シゲは思った。話すのは良いが、どこまで話せば良いのだろうと。
「そう難しく考えなくても。ただ、このままじゃ、いけないと思うんだ。」