17-66 全てを受け継ぐ者
單も璨も他の子と、そんなに変わらない。目も髪も黒くて顔も平たいし、見えたり聞こえないもの。
單も璨も見える目を持っている。でも違う。オビスやシロも気付かない、とても強い力を持つ何かが居るのに。
「きっと、あの子を産むために生まれたのね。」
六歳児が言う言葉では無い。
「そんな顔しないで。力は失うケド、ちゃんと長生きするから。夕と幸せに暮らすから。」
カー様が貴重な血を、はじまりの一族の血を分けてくださったのは。いや止そう。そうだよね、化け王だもの。次代を望むのは当たり前。
だってさ、他にイナイもん。
はじまりの一族で王族で、生き残っている女性は一人。ウィ王女。カー様の姉だよ、腹違いだけど。
どんなに強い酒を呷ってもドウコウできないよね。
「ナエ。生まれてくる子は赤い髪と、なぎ色の目を持っているのかな。」
「えぇ、そうよ。」
どうして知っているの?
赤い髪は赤みを帯びた黄色から金色へ、青い目は紫に変わるのだろう。カー様のように。
アンリエヌの民は皆、彫刻のように美しい容姿をしていた。けれどカー様は何というか、同じ人類とは思えない。アッ、違った。
御会いした事は無いが大王も王弟も、王妹も御美しいのだろうね。
この顔を初めて見た時は、それはもう驚いたよ。面影はあるけど、どう見ても違うってね。アハハ。
「その子の名は、そうだな。ナギ。」
「なぎ?」
「そう、ナギ。花は一日で萎れるけれど、茎や葉は食べられる。とても美しい草だ。」
次の化け王になるんだ。人として生まれ、死んで変わる。
はじまりの一族が生まれ持つ才は全て、カー化け王が収集なさった。ナギは、その全てを受け継ぐ。
田や沼に生え、根は土に固着する。
アンリエヌには咲かない、いや生えてもイナイ一年草。カー様の瞳と同じ、青紫の花を咲かせる生命力の塊。
「良い名だわ。強くて優しい子に育ちそう。」
六歳児にする話ではない。六歳児が言う言葉でもない。
「ナエ、幸せにおなり。ずっと、ずっと見守っているよ。」
「エッ、父さん。遠くへ行くの?」
「違うよ。この御山から出る事は無いし、遠くへ狩りに行っても戻ってくるさ。でもね、母さんも父さんもナエより先に死ぬ。」
ナエがコクンと頷いた。
「單が居る、璨も居る。何より夕が居る。だから強く、美しく生きるんだ。」
はじまりの一族が持つ才は、その所有者が死亡することで継承される。恐らくナギは、この命が尽きた時に誕生する。
となるとカー様と同日、同時刻に死亡する事になるのか。
まぁ、それはソレで。今アレコレ悩んでも仕方が無い。生きているんだ。死ぬ間際、後悔しないように生きよう。
それが生きるってコトさ。
「さぁて、そろそろ出掛けるか。」
單を連れて樹を、先見さまを御迎えに行かなければ。
「ナエ。母さんと璨を頼むよ。」
「はい。」
ジロが家を空けている間、オビスとシロが鎮森からシッカリ守る。侵入者が居れば迷わず、速やかに殺処分。
・・・・・・する前に排除するだろう。
再生編でした。継承編に続きます。お楽しみに!




