17-64 希望の子
天界の生き物を処分するには所謂、聖なる力というモノが必要。
ソレは才を以てしても創造できぬ、特別な力。
「やっと静かになった。」
相変わらず周辺諸国から食料、ではなく兵が押し寄せる。こちらは大歓迎だ。
けれど天界のソレは、迷惑以外の何者でもない。
「そうですね。」
魔物文官では一番の古株。『アンリエヌの生き字引』と呼ばれているアルバが微笑む。
天界が降伏した事で戦後処理方針を定めた。軍国主義的指導勢力の除去、天界軍の完全な武装解除、戦争犯罪神の厳罰、賠償の実施である。
平和産業の確保も組み込みたかったが、天界相手にソレは難しい。というコトで外したのだが、アチラから提案される。
もちろん跳ね返したよ、速攻で。
「疲れたろう。今日は、もう休みなさい。」
「そうしたいのは山山なのですが・・・・・・。」
激務に次ぐ激務で朦朧としていたのだろう。本能のまま食らったのが神肉だと気付いたのは、鏡に映る己の姿を見た時。
パッチリお目目がギンギン、ギラギラになっていてビックリ仰天。
『寝不足は美容の敵』を座右の銘にしているのに、『眠れないなら仕方無い』と開き直って夜昼逆転生活を送るようになったのに、どうしてコウなった。
暗くて風通しが良い執務室で頭を抱えるも、『こうなってしまっては仕方がない』とバリバリ働く。
その結果、アドレナリン大放出。
「さぁ、おいで。子守歌を歌ってあげよう。」
アルバを腕に止まらせ、ニッコリと微笑んだ。
「はい。お願いします。」
キュルン。
アルバは梟の魔物。梟は夜の猛禽類。聴覚による狩りが重要でナイため、耳は顔盤の下に隠れている。
けれど主から『子守歌を歌ってもらえるなら、グッスリ眠れそう』だと大喜び。
序にナデナデ、オネダリしようかな。
「エド兄さま。少し、宜しいでしょうか。」
「何だい、ウィ。」
「新たな一族に、これまでとは違う力を持つ子が生まれるようになりました。」
「何だって?」
最初に気付いたのはジャド。アミがウィをイヤラシイ目で見たので王城地下、特別区画へ向かった。そして驚く。
性質が荒く、猛猛しい者。ヒョロリとしているが素早く、攻撃的な者。剣の扱いが上手い者などが集まり、技を競っていたのだ。
昔から才に似た力を生まれ持つ、希望の子が生まれていた。けれど、どう考えてもアレは違う。
破滅へ向かって突き進む。そんな危うさを秘めていた。
「そうか。」
ジャドから話を聞き、ウィが確かめに行く。そこで見た事、聞いた事を報告したのは生き残るため。
「化け王に御伝えしよう。」
このままでは、きっと恐ろしい事が起こる。そうなる前に報告し、管理しなければ。
カー王は歴代最強と謳われる、全ての才を収集した化け王。
とはいえ次代が望めず、死ぬに死ねない。けれど生き物なので外見は変わらなくても、中身は少しづつ弱っているハズ。
完全体では無いのだから。
「希望の子を監視し、その全てを記録せよ。」




