17-63 天界産を消費できるのは
神肉を食したことで呪われ、不老不死となったアルジャン。火に対する恐怖を克服したが、炎はまだチョッピリ怖い。
とはいえソレは平時での事。
「ここはアンリエヌ。アンリエヌにはアンリエヌの法があり、法を守れぬなら死、あるのみ。」
不法滞在は即、強制送還。アンリエヌの民に危害を加えれば問答無用で拘束し、裁判ナシで死刑執行。
「なっ、そんな事が許されるとでも。」
許されるよ。だってココ、アンリエヌ国内だもの。
「神に畏れを感じぬとは。」
「・・・・・・鳥の神、なのか?」
アルジャンが首を傾げる。
天使軍団、ムッキィ。鏃に酒を浸した綿をズボッと刺し、鼻で笑いながら点火。一斉に放つ。
犬を仕留められなくても、矢が落ちれば火の海になる。そうなれば多くの人が命を落とし、天界への土産が増えるだろう。
「エッ。」
ココ、ドコ。
目玉、目玉、目玉。見渡す限り、目玉の海。手を伸ばそうとして気付く。体が無い事に。
「天界産を消費できるのは、はじまりの一族だけなのだが。」
残っているのは化け王、カー。大王エド、王弟ジャド、王妹ウィ。
「ばっ、化け王。」
天界の生き物を消滅させられないダケで、その血肉を処理する事は出来る。
「天使の出生率が上がっても、幼体や成体の死亡率が上がれば困るだろうに。」
神肉を食せば呪われ、不老不死となる。アルジャンが身をもって証明した。
けれど才を奪われて吸血鬼化し、条件付き不死となったエドたちは例外。
「こちらは困らぬがな。」
エドとジャドは『あぁ、そうか』程度。しかし紅一点、ウィは狂喜乱舞。
不死にはナレナイが若返り、往年の華やかさを取り戻す。
「バケモノ。」
一国の王に対し、ソレは無いんじゃナイの?
お肌プルプル、お尻プリッ。垂れていた胸も元通りになり喜ぶウィを見てカーは思った。神肉の安全性に問題が無ければ、国策として推進するのにと。
若返りを目的とする医療・美容は儲かる。アンリエヌ国内で受け入れるのは難しいが、タルシェならソレが可能。
権力者や金持ちからタップリふんだくり、ではなく頂こう。そう考えた。
アンリエヌは山国。
各種技術が向上しても、思うように上がらないのが食料自給率。タルシェを飛び地にしたが島。平地は少なく、土壌も農耕には不向き。
とはいえオリーブに葡萄、海の幸にも恵まれている。オリーブや魚介類を使った料理、ポリフェノールを多く含む葡萄酒を振舞えばイケル。
・・・・・・ハズだった。
「天界へ戻り、伝えよ。『アンリエヌに手を出すな』と。」
神肉を食せるのは、はじまりの一族に限られる。他は呪われ、不老不死となってしまうから。
「何が狙いだ。」
狙いも何も無い。ただ、ただ迷惑なダケ。
「食い散らかすなら他へ行け。」
カーも不老不死だ。けれど次代が生まれれれば、その生を終える。
エドたちとの違いは才の有無。




