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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1492/1601

17-59 しっかり聞きなさい


カヨとオビスが本気を出した。



鎮野しづめの祝女頭はふりめがしらから聞いた村へ向かい、呪いの種を植え付ける。シッカリ根を張ったら茎を伸ばし、花を咲かせて動かした。


おのの足で山守へ。滅んだ村へ向かうように。






「フフッ。」


のぶが笑う。


「ねぇ御婆。いつまで偽り続けるの?」






母は死んだ。けれど父は生きているし、兄も居る。なのに先見の力を引き継いだダケで、こんなトコロに閉じ込められている。


オカシイだろう。



ずっと考えていた。


母から娘へ引き継がれる祝の、先見の力が強い事は認める。けれど、だから何だ。どうして父に、兄に会えないのだろうと。






「知っているのよ。」


「な、にを。」


祝辺はふりべもり。闇の力を持つおにの守。」


ドキリ。


「鎮野の継ぐ子、鎮森に送り込んだでしょう。」






鎮森は心の強さや力を厳しく試す、人を通さない森。


祝辺に辿り着けるのは一握ひとにぎり? いや違う、一撮ひとつまみだ。






「これまで、どれだけ殺したの。」


樹の声が刺さる。


「これから、どれだけ殺すの。」


樹の目が冷たい。


「答えて。これから会うのは縛りの力を持つ、祝辺の男よね。どうやって連れ込んだの。」


やしろの司、禰宜ねぎ、祝の目を盗んで。






よしはユタを選んだ。鎮森に認められた継ぐ子で、木の声が聞こえる。けれど強くない。そんな男と契り、生まれたのが夕。


あの時、思った。このままではイケナイと。だから乱雲山から来たというジロと、あの男と契らせようと思ったのに。なのに?






「嫌よ。」


エッ。


「決めた。ナエの弟、ひとと契るわ。」


うふふ。


「兄さんはナエ、のぶは單と契る。生まれるのはジロの孫。嬉しいでしょう。」






單もさんも隠しているが、祝の力を持って生まれた。祝も知っている。


知っていて黙っているのは先見さまを引き取り、育てる御婆が祝辺に操られているから。






「渡さないわ。鎮野の人も村も山も全て、祝辺なんかに渡さない。」


何を見た! いや、違うだろう。


「やっと終われる。」


「いいえ、始まりよ。」




御婆の胸から棘を持つ、黒い蔦がスゥっと伸びた。それが御婆を捕らえ、繭のように包む。




「怖いよ。」


「助けて。」


「帰りたいよ。」


「お母さん。」




頭の中に響くのか、繭の中に響いているのか分からない。


分からないが聞こえる。幼子おさなごの声が、泣き叫ぶ声がガンガン流れ込んで来る。




「しっかり聞きなさい。御婆に殺された鎮野の、何も悪い事をしていない子の叫び声を。」


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