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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1490/1601

17-57 狼だって


ジロは勿論もちろんナタも、二人の子もシロとオビスに守られている。


ナエは大蛇神おろちのかみめぐし子、マル特製の守り袋を首からげているので安全。ナタはジロが居ないと家から出ない。


ひとわざわいもたらすモノをはじくし、さんは弱くても水を操る事が出来る。






「だから何だ。」


カヨの声が、また低くなった。


「ソレは今まで、女を見ても。」


カヨの闇がグサッと、祝女頭はふりめがしらの胸に突き刺さる。


「女を見ても?」


伸びた根に棘が生え、心の臓に食い込んだ。




シャッシャッシャッシャッシャッ。




「どうした。」


ドクドクドクと押し出される血が、その流れがとどこおる。


「なっにも、起こらず。」


唇が紫に変色。とっても苦しそう。


「続けろ。」


「はい。」




シャッシャッシャッシャッシャッ。




「ヴォン。」 ホレタヨ。


狼だって穴、掘れます。ジロのためなら喜んで、ココ掘れワンワンもするヨ。






ナエを手籠てごめにしようと考えた破落戸ごろつきを埋めるのか、その危険性を知って居ながら放置した祝女頭を埋めるのか。


決めるのは呪いの種、多鹿たかのカヨ。






「お待ちください。」


ナエがカヨに頭を下げた。


「祝女頭が動かなかったのは御婆さまに、とても強く言われていたからです。」


先見さきみの力を生まれ持つ嬰児みどりごを引き取り、鎮野社しづめののやしろの離れで育てるアレか。


「次の先見さま、継ぐ子たち。守らなければイケナイ人が多く、従うしか。」


それでも許せない。




片付けようと思えば、いつでも片付けられる。それに今、考えなければイケナイのは生き残りの事。鎮野に、ドレだけ紛れ込んでいるかだ。




「ナエ、戻りなさい。」


「はい。」






ナエが家に入るのを見届けてから、シロが掘った穴に汚染水を流し込む。それから破落戸を放り込み、まとめて山守に運んだ。



山守の村に家は無い。生き残ったのは山守社に、山守神に仕える人だけ。他は死んだ。


むくろを埋めようにも、穴を掘る人が居ない。だから骸を焼くため、ボロボロだった家を使った。






「さぁて。」


カヨは呪いの種。琴をきながら歌ったり、大きな物を運ぶ事は出来る。けれど肉体が無い。


「頼めるかい、オビス。」


「はい。」






オビスは妖怪。山守神に捧げられた幼子の骸に闇堕ちした山守のおにが入り、生まれた妖怪。山守の民を憎み、山守の村を滅ぼしたいと思っていた。


だから手を貸す。






「ぁ・・・・・・。」


ヒュゥヒュゥと息が漏れ、思うように話せない。


「山守の民は弱い人を、さらってきた人を生贄いけにえにした。人柱ひとばしらにした。生きたまま殺し、手を叩いて喜んだ。だから生きていてはイケナイ。解るね。」


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