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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1481/1599

17-48 守るよ


生まれる。ナタとの子が、初めての子が生まれる。


男でも女でも良い。ナタが生きていれば、すこやかならソレで良い。






「湯だ、湯をかせ。」


産婆さんばが叫ぶ。


「ヒャイッ。」



お産は女のいくさ。男に出来る事は湯を沸かし、熊のようにウロウロする事だけ。






「ホギャァ、ホギャァ、ホギャァ。」 ヤットデタ、ツカレタ、サムイィィ。



プカプカ気持ち良く過ごしていたのに、それなのにグゥっと押し出されてビックリよ。幾らフニャフニャでも潰れるって。



「ホギャ、ホギャ、ホギャ。」 スコシアツイワ、デモアタタカイ。ホメテツカワス。



ふぅ。やっと落ち着いた。


・・・・・・エッ、なにナニもう出るの? ゴワゴワするのに包まれても嬉しくナイ。






「ナタ!」


ジロが産屋の入口で叫ぶ。


「・・・・・・入るぞ。」


返事が無かったので飛び込もうとしたが、思いとどまって一声かける。


「ならん。」


産婆が答えた。






ナタは我が子の産声うぶごえを聞いて安心したのか、気を失ってしまう。


初産ういざんは長引くモノだがスルリと生まれた。と言っても命懸けの大仕事。






「ナタは、その。生きているのか。」


子は生きているのだろう。大きな泣き声が聞こえたから、きっと強い子に育つ。


「生きている。眠っているから少し、そのまま待て。」


少し? そんな事を言って、いつまでも待たせる気だな。ナタ、信じているよ。生きていると。


「そんな顔をするな。ナタは生きている。」


なら、どうして会わせてくれないんだ!






愛妻の心配をするジロを、鎮森しづめもりからジッと見守るオビス。


直ぐに駆け寄ってギュッを抱きしめたい。けれど、そうしないのは見える人が居たから。






「ジロ、落ち着いて。子を産むのはね、とっても痛いんだ。だからイロイロ構ってイラレナイ。」


それはソウだろうケド。


ゆうが生まれた時もソウだったよ。」


あれから一年ひととせほど経った。ボンヤリしている事が多いが、夕は賢い子だ。


「ジロ、良いぞ。入れ。」


「ハイッ。」




ナタに駆け寄り、口元に耳を近づける。それから首筋に触れてホッと一息。




「ナタに似た女の子だ。ほれ、抱いてやれ。」


小さくてフニャフニャで、とても温かい。


「・・・・・・ナエ。」




名は子への、初めての贈り物。だから幾度いくたびも話し合い、決めた。男でも女でも『ナエ』と名付けようと。




「ナエ。うん、とても良い名だ。幸せに暮らせるよう、シッカリ守れ。」


「はい。」






ナタが命懸けで産んでくれた、それも初めての子だ。


母から娘へ受け継がれる力は強く、恐ろしいモノ。ナエが潰されないよう、しっかり守らなければ。


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