5-75 ないのか
「フウゥゥゥゥ。」
大仕事を終えた妖怪たち。出で湯を満喫中。
「それにしても、化け王とは。」
「やまとだけでなく、遠く離れた地の。」
「それも、王。」
「凄い、としか・・・・・・。」
「フウゥゥゥゥ。」
妖怪も出で湯、大好き!
「フク。出で湯団子だ、皆で食べよ。」
折詰持って、ゴロゴロ帰還。
「まぁ、ゴロゴロさま。釜戸山へ?」
「フム。良く働いたからな。そうだ、話がある。」
風見が、山裾の地を狙った。この度は退けた。しかし、諦めないだろう。
「では、その、戦に。」
「な、らない。」
ゴロゴロ。真顔から、ニャッと笑う。
「・・・・・・良かったぁぁ。」
フク。団子の折詰を抱きしめ、ホッとする。
山裾の地は、霧雲山の統べる地。三鶴やら、玉置やら。中でなら、争おうが、戦おうが、構わない。
しかし、他の地から攻めてくるなら、別。祝辺の守が、決して許さない。戦になる前に、裁く。というより、消す。この度のように。
「フク。忘れては、ならぬ。山裾の地だけではない、霧雲山の統べる地、すべて。どこで、誰か、何を、どうするのか。お見通しだ。」
「はい。決して、忘れません。」
「鑪神。魂迎湖の外れ、獣がうろついていました。」
鑪神の使わしめ、ヤイバ。釜戸山から真っすぐ戻らず、魂迎湖、魂鏡社へ。
「そうか。で。」
「深い悲しみに、囚われておいでです。」
魂鏡神、水底でオイオイ。急ぎ戻った使わしめ、ハク。キュルンとした瞳で、ニョロニョロと歌い、舞う。
しかし、神の御心は、晴れることなく・・・・・・。
「気の毒に。」
火炎神が、統べる地とはいえ・・・・・・。
「はい。」
「釜戸山の、出で湯団子を差し上げましたら、喜ばれました。」
明るい声で、ニッコリ。
「・・・・・・ないのか?」
鑪神。甘い物、大好き。
「あっ。」
ヤイバよ。なぜ二つ、求めなんだ?