17-46 悪因悪果
どんなに手を尽くしても守れない、守り切れないモノがある。それを為すために迷わず、恐れず突き進む。
それが御山を、多くの生き物を救う事に繋がると信じて。
「山守で広まり、癒せぬ病を無くす。そうしなければ人が消え、御山が崩れてしまう。」
ココまでは良い。
「だから焼くのは山守の民と家。山守社と離れ、山守神に仕える人は残せ。」
狐火で守っているシズエの目が、瞳が一点を見据えたまま動かない。
「ゲレド、ゾレデッ。」
御怒りだ。お狐サマが御怒りだ。
山守社の継ぐ子は、その多くが十二まで生きられない。祝の力を持っていても熱を出し、弱って死んでしまう。
今、残っているのは年寄り。
社の司と禰宜は受け入れた。
己らも山守で広まった、あの病に罹っている。体が燃えるように熱くなれば死ぬ。そうなる前に継ぐ子を、弱って死んでしまった者を手厚く葬る。
それが残された者の務めだと。
「ヒッ。」
九尾の白狐が本気を出せば隠でも、祝辺の守でも徒では済まない。
「火を消せ! るのか。」
山守の民によって村は一面、火の海になった。その火は勢いを増し、山守社に迫っている。
「缸、いや焰。凬と墾にも力を。」
水を操る力を生まれ持つ缸は二十一代、火を操る力を生まれ持つ焰は二十二代、風を操る力を生まれ持つ凬は二十三代、土を操る力を生まれ持つ墾は二十四代、祝辺の守。
缸は雨乞い、焰は焼き捨て、凬は日乞い、墾は荒地を切り開く事が出来る。
四隠が力を合わせれば消火可能。なのだが觸、二十代より陰険でネチネチしている八を毛嫌いしている。
「貸すと思いますか。」
考えるマデも無い。
カヨは怒った。ティ小のうたを気に入り、聴きに来てくれる隠が泣いている。慌てふためいている。
悪いのは全て、山守の民。
山守の民が死んでも、痛くも痒くもない。その骸を焼くのに家を壊しても、火の中に放り込まれるのを見ても何も感じない。
「グハッ。」
カヨに呪われた八が、己の心臓を握り潰した。
「あぁ、ソウ来たか。」
とつ守が微笑み、八の頭を鷲掴みにする。
「八よ、迷うな。隠の守だろう。」
火の海にポイと投げ込まれ、ベチャッと落ちた八は見た。山守社の後ろに缸、広滝の上に焰。その真中、東に凬。西に墾が居るのを。
土の壁で覆われ火柱が立つ。と同時に水と風の衣を纏い、そのままドンと押し込まれた。モウモウと立ち込める水蒸気が山守の地を包み、逃げ惑う隠を捕らえる。
「ヨリ。」
「はい、いつ守。お任せください。」
ヨリは人や物を他に移す力を生まれ持つ。八に呼び出され、地涯崖から投身自殺させられた二十九代、祝辺の守。
いつ守は隠になったヨリを見て笑った八を見て、スッと前に出て言う。『私が引き受けます』と。
それからヨリは、いつ守の側から離れようとしない。




