17-45 赤い花が咲いて散る
目をギョロギョロさせ、ブツブツ言いながら歩き回る八を見つけるのは難しい。けれど、とつ守なら見つけられる。
鎮森の民が案内してくれるので迷わず、歩き回る八の元へ。
「突っ込め突っ込め、腰を振れ。」
ヒッヒッヒ。
「山守の種を残すんだろう?」
クックック。
山守の民は恐れた。
嬰児が生まれても、直ぐに死んでしまう。幼子は育っても七つ、八つ。男も女も赤くて大きな点が体のアチコチに出たり、熱を出してガタガタ震えるようになる。
若いのがバタバタ死んでゆく。
残るのは年寄り。中には死ぬのも居るが、その多くは女好き。
攫ってきたのを押さえ付け、初めに試すのは長。それから若いのがガンガン打ち込み、逆らわなくなったら年寄りがネチネチ攻める。
「ヤる事やらなきゃ増えないぜ。」
ケッケッケ。
「真っ赤っか、真っ赤っか。赤い花が咲いて散る。」
ヘッヘッヘ。
山守の男と男が交わり続け、死ぬ病が広がった。病を持った男が女に移し、移された女から男。胎の子にも移る。
そうして広がったのだが、この病の恐ろしさは長く潜ること。
移されてから直ぐ、体の中で毒が増える。
増えて増えて増えるのに、病持ちに変わったトコロは見当たらない。だからドンドン広まって、忘れた頃にドンと出るのだ。
ドンと出たらアッと言う間に弱り、死んでしまう。
「その花を出すなよ、山守で咲かせろ。」
フッフッフ。
「山守の外に出したらオシマイ。」
カッカッカ。
山守の民が男と交わるようになったのは、他の里や村から思うまま女を攫えなくなったから。攫っても山守に着く前に逃げられたり、試す前に逃げられてしまう。
その多くは他の山に逃げ込むか、山越に助けを求める。
ずっと昔は違った。
足りなくなったり飽きれば山を下り、アチコチの里や村から若いのを。子を攫って閉じ込め、逆らわないように育てていた。
なのに今は、ちっとも思い通りにナラナイ。
「山守を強い村にぃ。」
ガンガンガン。
「強い子を産めぇぇ。」
ゴンゴンゴン。
「孕め孕め、産んで育てろぉ。」
パンパンパン。
山守の民は、山守から出た者は長く生きられない。体に入った悪いモノがドンドン増えて、シッカリと根を張るから。
山越に逃げた人も同じ。慣れた頃に出て、弱って死んでしまう。
山越の長は山守の話を聞き、村外れに他所の人を住まわせる家を建てた。山守に攫われ、逃げてきた者は村に。山守の民を村外れに集めて見張る。
今のトコロ山守にしか出ない、あの病を広げないために。
「焼け焼け、焼き尽くせ。」
パチパチパチ。
「外に出すな。」
ボウボウボウ。
「ヴッ。」
背後から壷を叩きつけられ、後頭部がベコッと凹む。
「八よ、周りを良く見ろ。森を燃やす気か。」
とつ守、御立腹。




