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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1475/1604

17-42 その魅力、三割増し


山守の民が、これまでよりオカシクなった。元からソウなのだから、それはもうタイヘンな事になっている。






「・・・・・・。」


カヨじゃなくても言葉を失う。



女が居なくなった。だから男の、というワケでは無い。


突っ込めればドコでも良かったのだ。初めは生きた人の、それから死んだ人の尻の穴にのどの奥。



「ココまで来るとあわれだな。」


とつ守が呟いた。






にあるのは不安を増幅させ、心を操る闇の力。


対象を動揺させたり混乱させたり、絶望させたりして出来た隙に闇を流し込み、思い通りに動かす。そんな力だ。



そんな八が初めに仕掛けた罠は、『女が少なくなっている』だった。少なければ、なかなか手に入らなくなれば欲しくなる。それが人。






「渡さん! ワシのモノだ。ギャハハハハ。」


完全にイッちゃってマス。


「ドウだ、ドウだ、ドウだ。」


見たくないよ、そんなモノ。






八は『子を増やさなければ山守の村が滅びる』と思わせたのではナイ。『たなくなったら男として終わる』と揺さぶり、『腰を振り続ける』ように仕向けた。



生き残った山守の民は、男は周りが見えなくなっている。


娘に子持ち女、幼子おさなご嬰児みどりご。老いた女も、もう居ない。残っているのは男だけ。なのに腰を突き出しブルンブルン振り、穴を見つけては突っ込む。






「闇が、闇が止らない。あふれてしまう。」


山守神やまもりのかみが御頭をかかえ遊ばす。


「アチコチから噴き出すから、どんなに願っても薄くならないの。」


おっしゃり、遠くを見つめ為さった。






山守神は山神で在らせられる。


霧雲山系を丸ごと清めたり、豊かにしたりとイロイロ御忙しい。だから山守の村からバカスカ噴き出す闇など、山守の村ごと祓い清めてしまいたい。



山守の民が消えて滅びても、骨ひとつ残らなくても構わない。なんて思っても御顔に出されず、御口に為さる事もない。


けれどハッキリ言ってギリギリである。






「モフモフしたい。」



山守神の使わしめ、シズエは九尾の妖狐。白く美しい毛並みの持ち主。その尾はフワッフワで、絹のように艶やか。


常に笑みをたたえ、てはイナイのだがソウ見えるのが狐。その口元がヒクッと動いた。



「山守神、御気を確かに。」


柔らかく優しい温もりを求めてフラリ、ふらぁり。


「そちらは」


ゴンッ。


「柱で御座います。」


遅かった。




御目を潤ませ、黙って見つめ為さるのは狐の尾。腹でも耳でもなく九つの尾。




「シズエ。」


「はい。」






山守社やまもりのやしろは山守の村外れ、山守では珍しく日当たりの良いトコロにある。


シズエの毛皮が輝いて見えるのも、青空に浮かぶ雲のように見えるのも気の所為せいでは無い。全て陽光の力。


その魅力、三割増し。


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