表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1470/1598

17-37 何を言い出すかと思えば


舞とみつは夫婦で、こう幼馴染おさななじみ。揃ってナタの母、タエとも古い付き合いである。


舞は鎮野社しづめののやしろ祝女はふりめ、満は祝人はふりとだが紅はやしろつかさ。御婆さまでも逆らえない。






「ユタ、家に戻りなさい。先見さきみさまが動けるようになるまで、この母がシッカリお守りするわ。」


「はい。お願いします。」






御婆さまには任せられない。そう思っていたから母さん、父さんにも伝わったのかな。


それにしても気になる。御婆さまの、あの目。何となくドロンと、目の奥に黒いモノが広がっていた。






「闇に取り込まれたか、それとも。」


呪いの種か何かを植えられたのか。


「ヨシ、決めた。」


祝女頭はふりめがしら祝人頭はふりとがしらに急ぎ、お伝えしよう。






鎮野社の祝女頭になれるのは、強い守りの力を生まれ持つ者。鎮野社の祝人頭になれるのは、強い清めの力を生まれ持つ者。


どちらも今、産屋うぶやの近くに居る。



御婆さまが何を宿やどしていても、何を隠していても逃げられない。


閉じ込めて清められ、月の無い夜から月の無い夜まで月の光を浴び続ける。



ジロ。


御山の外、乱雲山から来た男。祝辺はふりべもりに認められた谷河たにかわの狩り人か忍び、木菟ずくや鷲の目に連れてこられたのか。


いや違う。



あの男は人とは違う『何か』を持っている。


その『何か』が何なのか分からないが、鎮野を変える力を、祝辺の守とは違う力を持っているのだ。






「それで?」


「わからぬのか。」


???


「次はユタの子ではナク、ジロの子を産ませるのだ。」


誰に。


「何だ、まだ分からぬのか。」


???


「ジロとナタを引き離し、よしと添わせるのだ。」


ナニイッテンノ、コノヒト。






ジロはナタを、ナタはジロを心から慈しんでいる。ナタの腹にはジロの子が居り、生まれるのを楽しみにしている。


そんな二人を引き離す? 出来っこない。



ナタは大泉から預かった、強い力を生まれ持つ娘。社の司である紅が後見になり、村外れで暮らしている。


その家を守っているのは山で暮らす、赤い目をした白い犬。






「強い男は、その種を」


せ、聞きたくない。」






ナタが持つ力は先見とは違うが先見に似た、とても強い力なのだろう。だから何も言わず黙っている。


先見の力が無くても判るさ。言えば子をバンバン産ませるために閉じ込めて、祝人を放り込むと。



祝辺の守になりたかったのか、御婆さまは。もしソウなら鎮野社ではなく、祝社の継ぐ子になれば良かったのに。


思い通りになるとは思えないがな。






「鎮野は祝辺とは違う。」


そんなの、当たり前だろう。


「いつか祝辺が、祝社はふりのやしろが動く。」


いやいや御婆、何を言う。末の事なんて見えない、読めないだろう。


「力を、少しでも強い力を持つ子を増やさなければ。」


増やさなければ?


「祝社に乗っ取られるぞ。」


「何を言い出すかと思えば、御婆さま。鎮野社が何を守っているのか、忘れてしまったのですか。」


「なに、を。」


ドロンとした目の奥がピカッと光った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ