5-74 長い旅の末
「狩頭。ちょっと、見てきます。」
風見から誰も来ない。いくら何でも、おかしい。
「・・・・・・待て。見ろ、動いた。」
サンが指差す。霞のせいで良く見えない。目を凝らす。
玉置から、出て来た。フラフラしながら舟に乗り込み、深川へ。皆、暗い顔をしている。
「オイ、見ろ。」
ヤカが声を抑え、叫ぶ。皆、強そうだ。東山か、武田。数が少ないが、違いない。
「オイ、あれ。」
肩を叩かれ、トモは見た。玉置から、強そうなのが。
「動いた。」
狩り人ジン。ニタアァと笑う。
どれも妖怪たちが見せた、幻。
山裾の地。守の許しなく潜む、不届き者。風見の出でなくても、魂を引っ剥がす。ベリッ、ベリッと、楽し気に。
剥がした魂は、甕の中。ポンポン放り込み、蓋をする。打合せ通り、キビキビと! 甕を守に託し、任務終了。
「信じられない。なんなの、アレ。ってか、ナンデ動けないのよ!」
アンが叫ぶ。
「アンリエヌにも、いるのでは?」
「だれ!」
誰もいない。
「化け王の姉、か。」
声が違う。
「腹違いか?」
また、違う。
「王家の恥ですね。」
「カー!・・・・・・アンタ、その姿。」
国を出て直ぐ、目立たぬよう乗っ取った。その時、捨てたはず。なのに、なぜ。
「王に『アンタ』とは。」
「それより、その姿。」
「姿?」
「惚けるな! 知っていれば、捨てなかった。」
「終わりにしましょう、姉上。」
「終わァァ。」
カーに拘束されたアン。すぐに凍らされ、破壊、焼却。王城の外にいる『はじまりの一族』は、絶滅した。
「では、祝。これにて。」
「化け王。」
「エンとの約束です。裏切られない限り、ね。」
・・・・・・。
「約束を破る王は、王じゃない。」
「わかりました。信じます。」
ニッコリ微笑み、姿を消したカー。祝辺の守は、思った。『化け王だけは、敵に回したくない』と。