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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1464/1598

17-31 妙だな


妙だな。鎮森しづめもりにも熊は居るが、このあたりでは出ないと聞いたぞ。


土に光りが当たるように、風が流れるようにシッカリ手入れされている。だから隠れる場所が無い。






「ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ。」


こりゃマズイ、過呼吸だ。袋ふくろ。


「怖いのは倒した。これを口に当てて、ゆっくり息をするんだ。」






ジロが幼子おさなごの口に皮袋を当て、優しく背中をさする。初めは戸惑っていたが少しづつ肩の力が抜け、落ち着いてきた。


楽に息が出来るようになり、しばらくすると安心したのだろう。ウツラウツラし始める。肩を抱くとジロの胸に頬を寄せ、スゥスゥと寝息を立てた。



起こさないようにユックリ寝かせ、仕留めた熊の血抜きとわた抜きを始める。近くに狩り人かきこりが居れば子を任せられるが、そんな気配はシナイ。


だから急ぐ。






「ヨシ、こんなモンだろう。」


背負いかごに熊掌と、帰り道で仕留めた鳥と兎を入れている。助けた子を横抱きするので、二頭目の熊肉を持ち狩るのは難しい。


荷車にぐるまでも作るか。」


アンリエヌ製品のように、柔らかい車輪は作れない。けれど木を反らせて組み合わせれば、引っ張って歩くモノを作れるだろう。


「村に戻って説明して、ぐに戻れば何とかなる。」


ような気がする。






スゴイ。あんなに大きな熊を、とんがった太い枝で倒すなんて! きっと群れのおさだね。お願いすれば群れに入れてもらえるかな。


人じゃナイけど、そうだ。これからは人と、人の暮らすトコロで生きよう。



・・・・・・というコトなので、よろしくお願いします。


なんてネ。人に思いが、考えている事が伝わるワケないのに。良いんだ、それでも。






「あの狼。殺気とか悪意を感じないケド、ついて来られると面倒だな。」


今のトコロ一頭だけ。けれど、もし。


「『ついて来るな』と言って通じる相手じゃナイし。」


困った。


「まぁ追い追い考えるとして、今は。」


この子を親元へ。






早い。人なのに、どうして。


他の人とは違う何かを感じるケド、それが何なのか分からない。悪い感じはシナイから、きっと良い人なんだ。



わからないのは、もう一つ。


あの鳥、何だろう。ずっと見張られている。違う、見守っているんだ。あの人を。






「ん、何だ。」


ナタが居るのは分かるが、どうしてユタが。やしろつかさ禰宜ねぎ畑人はたびととかも居るな。


「アッ。」


この子の親かな?


「サイ!」


サイって名なのか、この子。


「生きてますよ。」


ニコリ。






熊に襲われそうになっていた子を見つけ、持っていたくいを投げて倒した。


怖かったんだろう。息を吸い過ぎて苦しそうだったので、皮袋を口に当てて落ち着かせた。落ち着いたらホッとしたのか、この通り。



という感じで話したのだが、どうやら刺激が強すぎたらしい。


鎮野社しづめののやしろで話が聞きたい』と言われ、獲物が入った籠をナタに渡す。それから狩り人に頼んだ。


『森に置いてきた熊肉を、幾人かで取りに行ってほしい』と。






「やっと帰れる。」


日が暮れる前に解放されたが、もうクッタクタ。


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