5-73 なるほど
風見の国は、戦好きで知られる。どこで聞きつけたのか、暴れ川を上がり、山裾の地で潜み、隠れている。
狩頭、長の倅サンとトモ。狩り人ジン、ヤカ、ウネ。五人ほど引き連れて、あちこち散っている。
拠り所は、木下の村の外れと、深川の間。舟をひっくり返して、構えている。
戦、戦で、敵だらけ。そんな風見に味方するのは、早稲くらいなもの。だから、奥の地にある国を潰し、加えようと考えた。狙うは玉置、北山、東山。
三鶴も狙っていたが、やめた。滅ぼすはずだった稲田に、牙を剥かれた。稲田、大田、草谷の長は組み、三鶴を見張っている。操れない国なんて、煩わしいだけ。
風見は隙を見て、玉置を攻める。木下の外れを選んだのは深川沿いで、玉置を見張る事も出来るから。暴れ川は深川と繋がっており、速やかに兵を送れる。
風見から送られる兵は全て、隠れ里が消す。いくら待っても来ない。そうとは知らず、奴等は待ち続ける。
玉置、北山、東山。三つの国に戦う力など、残っていない。武田と飯田は、食べ物を渡したくなくて、加わっただけ。
戦を仕掛けるなら、夏の終わり。稲を育て、刈り取る。それからだ。
日吉山を攻める? 深川沿いに、川田。大川の先に、釜戸山。乱れ川の先に、岩割。川を上がるたび、狙われる。それに良村。犬好きが頼めば、馬守も動く。
進む度、攻められる。引こうにも、後ろには良村。更に後ろに、馬守。考えれば、分かるだろう。勝ち目など、ない。
「バケモノは、何も知らぬ。分かっておらぬ。多くの魂を食らうため、戦を待って。国盗りを狙う風見の、歪んだ魂を、今か今かと。だから、な?」
「なるほど!」
使わしめ、社へ戻る。
山守神は、見守り一択。そうなると、動く。祝辺の守が。
人と妖怪がもたらす情報を整理し、導く。生者と死者、両方を使役できる、唯一の存在。霧雲山の、影の支配者。それが祝辺の守。
守るためなら、手段を選ばない。味方なら心強いが、敵に回ると厄介。その守が出した結論。霧雲山の統べる地に、害を齎す、風見の殲滅。
まず、暴れ川の水底から、獣谷の奥へ、闇を繋いだ。骸は、川を堰き止めることなく、流す。舟や積み荷は、隠れ里へ。
はじめは驚いていたが、風見に苦しめられた人も多く、手伝ってくれた。
雪が高く積もる前、風見は一度、引いた。雪解けの頃、暴れ川を上がる。そして・・・・・・。
春といえば、子育て。冬の間、巣穴に籠っていた、腹ペコ熊たち。ポンポン放り込まれる骸に、大喜び。
川底から獣谷の奥へ、闇を繋いだのは化け王です。いくら祝でも、出来ません。妖怪にもムリ!