17-25 見守ろうじゃないか
私、親になるのね。
この中に先読の力を継ぐ子がいる。まだ動けないし頭がフワフワするけど、この子は大きくて強い力を持つ子を産む。そのための器。
「そうよね。」
鎮野でなければ守れない。
「何が『そう』なの、ナタ。」
「ジロ、笑わない?」
「うん、笑わない。」
「ここにね、子が出来たの。」
横たわったまま腹に手を当て、ニッコリ微笑む。
「エッ、もう?」
ジロが体を起こし、ナタを見つめる。
確かにアンな事やコンな事をイロイロ致しました。無理させないように時間をかけて、それはもう丁寧に。
だってさ、痛い思いさせたくナイもん。心も体もトロットロに蕩けさせて、『もっと』って思わせたいじゃない?
いやいやジロ、そうじゃない。今は違う。致したのは昨夜で、うん。出来てもオカシクナイ。はい、お父さんです。
・・・・・・けどさ、そんなに早く分かるモノなの? いや嬉しいよ。ナタとの間に生まれる子だもの、きっと可愛い。いや可愛いに決まっている。
「ありがとう、ナタ。」
キチンと座ってからナタの頬に触れ、微笑みながら感謝する。
「えっ、と。どういたしまして?」
ジロと向かい合い、パチクリ瞬き。
「触ってもいい、かな。」
「はい。」
ジロがナタの腹に手を当て、そっと口づける。ナタが頬をポッと、いやボッと赤らめた。
少し乱れた髪を撫でられ、ナタが微笑む。それからジッと見つめ合い、吸い寄せられるように唇を重ねた。
まだ夜明け方ですし、新婚サンですからね。詳しくは書きませんが、お察しください。
消しても消しても湧いて出る。
山守の民は呪われているのか、何かに守られているのか分からない。分からないが、この毒が利かないのはオカシイだろう。
「時が経てば、もっと強くなれるのか。」
真名を奪われた守は強い。縛られてイナイから強いのか、全力で務めを果たすから強いのか、他にも何かあるのか分からないが、思い悩んでも答えは出ない。
「出来る事からコツコツと。」
と、その前に。
「見守ろうじゃないか。大泉から鎮野に移り住んだ、先読の力を持つ娘の子を。」
人の子では納まりきらないから、器を大きくするために生まれた。そんな子が親になった時、動く。
先読の力も先見の力も持ってイナイが、そんな気がするのはナゼだろう。喜ばしい事なのに胸が高鳴らない。という事は、きっと起こるのだ。
「どう備える。」
仕掛けてくるのは人でも隠でもない、青白い顔をした何か。それを退けるにはイロイロ足りない。
「としても。」
いろいろ障りがある。
「このままではイケナイが、どうすれば良いのかサッパリ分からない。」
三十四代祝辺の守、時が呟く。その傍らで目を輝かせている守鼠、茂が駆け出した。向かうのは八がいる、祝社の離れ。
「おや、またかい。」




