17-19 簡単には死なせん!
頭が割れるように痛い。目が眩む、いや歪んで見える。
それに胸が、体が焼けるように熱い。
「エド大王、どう為さいました。お顔の色が優れませんが。」
何か知っているのか。
「新種の、それも凝縮された生き血を啜ったのです。細胞が破壊され、組み替えられてもオカシクありません。」
何だって!
「ジャド大臣、ウィ大臣も耐えられなかったようですね。お気の毒に。」
頼む、カー。弟妹を助けてくれ。いや、お助け下さい。
「今、手を出せば崩れますよ。」
崩れる?
はじまりの一族、それも王族だ。チョットやソットじゃビクともシナイ体を持っている。
ジャドとウィはカラカラに渇いたスポンジ状態だったので、エドより多く吸収してしまった。泡を吹いて気絶するのは当たり前。
「このまま放置すれば、もって三日。」
カー化け王。どうか、どうか御助けください。お願いします。
「細胞破壊は止められませんが、渇きを押さえる手立てなら一つ。」
私に出来る事なら何だって、どんな事でもします。ですから弟妹を、ジャドとウィを助けてください。
「ならばエド王。この惑星が消滅する、その瞬間まで化け王の僕として生きなさい。」
仰せのままに。
カーがジャドとウィの額に、人差し指でツンと触れた。すると赤黒かった皮膚が赤紫、赤紫から紫、紫から赤へと変化する。
薄紅色になると眉間の皺が消え、荒かった呼吸が穏やかになってゆく。それを見たエドが微笑み、白目を剥いた。
「死なれては困ります。」
スッと支え、額に触れる。
エドが持って生まれた才は回復。支配の才が無ければ大王にナレナイのだが先代、ジョド大王の崩御により即位。
化け王に奪われなければ、強要の才を持つジャドが即位していただろう。
全ての才を収集した化け王、カーは腹違いの弟。けれど頼れなかった。幼少期からバケモノ扱いし、虐げてきたのだ。今更、何を言っても突き放される。
エンとルーが生きていればと何度、思ったか。
「すまなかった。」
あの姉弟を化け王城に。そう聞いた時、直ぐに分かったのに何もしなかった。
「許されるとは思わない。」
あの時、回復の才を使っていれば。幾度か考えた。
「それでも。」
ボロボロになっても死ねないエンを、苦しむエンに回復の才を揮っていれば。そうすれば未来が、ほんの少しでも変わっていたように思う。
「許してほしい。」
勝手な事を。
ルーもエンも化け王城に幽閉されて、王族専用牢に入れられて喜んでいた。つまり城外では王族として扱われず、辛く惨めな思いをさせられていたのだ。
・・・・・・記憶を読んだ。『腸が煮えくり返る』というモノがどういうモノなのか、嫌というホド理解したよ。
行動に移さなかったのは、それを望まないと思ったから。
エド、ジャド、ウィ。死んだベンも同罪だ。お前たちを生かしたのは、それが交換条件だったから。
ジョド王に感謝しろ。簡単には死なせん!




