17-18 飲みすぎ注意
アミは王族に、大王に取り入ろうと考えている。そう報告を受け、バルトは思った。
血だな、と。
「何だ、これっぽっちか。」
もっと貰えると思ったのに。
「腹違いにしても。」
コレは無いだろう。
才だか何だか知らないが、それを失っても王族は王族。化け王だってソレを理解している。
だから地下に閉じ込め、生かしていると思っていた。
「出てぇなぁ。」
地上によぉ。
化け王城からの配給品は、旧王城地下で暮らす新たな一族に等しく与えられるモノ。あれこれ文句を言う気は無い。けれど、新種の生き血を啜った今なら解る。
パック詰めされた肉は美味しくない。
食べられないワケでは無い。だから食べるさ、生きるために。選べないんだ、仕方ないだろう。食べなければ死ぬんだから。
「鹿とか山羊とか、幾らでも狩れるだろう。」
獣で我慢するぜ。
「ハァ。」
配給されるのは獣の肉ではない。アンリエヌに押し寄せる敵兵や、不法侵入した犯罪者のモノ。
瓶詰ではナク真空パックされているのは、食品の腐敗や酸化を防ぐため。
はじまりの一族でも、その王族でも才を失えばタダの生物。日日の糧が無ければ生きられない。
新たな一族より量が少ないが、それでもソコソコ摂取する。
「金箔入りとかコラーゲン入りとか。」
美容に興味を持つオトシゴロ?
「外部から補わないと老けちまうぜ。」
まだ若いのに、もう老化が気になるんだね。
「ポリフェノール入りとか無ぇの。」
コレステロールの酸化とか、動脈硬化が気になるのかな?
ポリフェノールは野菜や果実の色素などに含まれる成分で、渋みや蘞みがある。注目を集めたのは1990年頃。
フランスは世界で一、二を争うバターと肉の消費国。
フランス料理もコッテリが基本。あれだけ動物性食品を摂取しているのに心筋梗塞や動脈硬化など、心臓病による死亡率は欧米先進国中最低。
その比率はドイツの半分、イギリスの三分の一くらいトカ。そりゃ気になるよネ。
フランスの逆説を解くカギとして注目されたのが、フランス人が常飲する赤ワイン。
フランスは世界一のワイン消費国。つまり、フランス人はワインが好き。ワインには心臓病を防ぐ『何か』がある!と考えられるようになった。
「飲んだことナイけど、大昔からあるんだろう? ワインって。」
何時頃から造られたのかは不明だが、ワインのような果実酒は果実が自然発酵するコトによって出来る。よって穀物の酒より歴史は古い。
アンリエヌでも葡萄が栽培され、葡萄酒が醸造されている。とはいえ山国。原料の制約があり、幻の銘酒と呼ばれているトカいないトカ。
「どんな味がするんだろう。」
軽いからグイグイ飲めるけど、酔いが回るのが早いよ。
「冬に飲むと体が温まるって、何かの本に書いてあったな。」
ホットワインかな。
 




