17-17 告げ口をするようで
王族は理解した。
けれど新種を食らっても生き残った、数名の新たな一族は違う。
「偉大なるエド大王の御傍に仕える名誉を、どうか私めに御与えください。」
アミが首を垂れる。
潜伏仲間であるシアとクアから距離を置かれ、孤立したアミは考えた。
大王の側近になれば見返せると。無い知恵を絞りに絞り、やっと浮かんだのがコレ。王族に己を売り込む事。
「確かに官吏を募集した。がな、アミ。大王側近にはナレヌぞ。」
ジャドに言われ、グッと下唇を噛む。
「はい、理解して居ります。それでも、どんな犠牲を払ってでも王族の御役に立ちたい。この思いに偽りは御座いません。」
大嘘である。
前述の通り、シアとクアを見返したいダケ。天涯孤独の身となったアミには、もう帰る場所は無い。頼る人も居ないのに孤立無援に陥った。
だから藁にも縋る思いで、謁見を申し込む。
「なぜ、そこまで。」
ウィが呟く。
「結果は追って知らせる。」
「ハッ。」
アミはジャドを、エドだと思い込んでいる。
同じ父母から生まれた兄弟だ。似ていると言えば似ているが、エドは正統派王子。ジャドは近寄り難い印象を与える王子サマ。
因みにベンには、無駄に色気がアリマシタ。
つまり大王の顔なんて知らない。
義務教育だって何度も留年し、やっと終えたアミが覚えているのは『はじまりの一族にとって新たな一族は希望』というコトくらい。
「不採用、としたいが。」
こっそり見ていたエドがポツリ。
「そうよね。」
ウィも嘆く。
「顔に出ていたからなぁ。」
ジャドもポツリ。
隠す気が無かった、としか思えません。
バレバレでしたヨ。『化け王に仕えるのは難しいので、大王で我慢しよう』と考えているのが。
「新しい宰相、バルトはフリツの養子。」
「特別養子なので生家との縁は切れているが、長兄の子が生き残っていると言っていたわ。」
ジャドとウィがエドを見る。
「下級官吏として採用しよう。」
「・・・・・・兄上、化け王には何と。」
「そのまま伝えるよ。」
従者が居なかった事もあり、下級官吏として採用された。けれどアミは周囲に、『官吏として採用された』と報告。
モチロン誰も信じない。
「なぁ、シア。告げ口をするようで何だが。」
「そうだな。宰相にキチンと、お伝えした方が良いだろうね。」
「早い方が良いな。」
「あぁ、そうしよう。」
過激派に限った事ではナイのかも知れない。けれど家と家の間には断ちがたい一体感があり、年齢に関係なく付き合いがあった。
だからイロイロ知っている。
昔から学力は低いが、思い込みの強さは突出していた。
これといった能力を持たないアミに何が、とも思う。けれど報告を怠った事が問題視されると、何かと面倒だ。




