5-72 一同、面を上げよ
山守神。許されるなら、社に籠りたいと希う、引っ込み思案な神。年に一度の神議りだって、使わしめに引き摺られ、泣きながら出席。そんな神が、使わしめを集め、話すのだ。
「山守神。シャキッと!」
「ねぇ、シズエ。守に、任せましょうよ。」
「では、神。祝辺へ。」
・・・・・・。
「前向きに考えましょう。狐だけではありません。狸に猫、蛇に烏、ほかにもイロイロ。モフモフですよ。」
「蛇は。」
「・・・・・・スベスベですね。」
九尾をワサワサさせながら、ニッコリ。
「ゴロゴロさま。お久しぶりです。」
「ミャアさま。お変わり、ありませんか?」
「はい。おかげさまで。」
こちらは、猫同士。
「それにしても、驚きましたね。」
「えぇ。思わず、水に入ってしまいました。」
「私など、木の実を喉に、詰まらせまして。」
シラユキとクロ。白黒コンビは、慌てん坊。
「シズエさま。お手伝いできることがあれば、何なりと。」
「これはポコさま。お気持ちだけ、ありがたく。」
狐と狸の、化かし合い?
あちらこちらで、ワイワイ。烏と蛇、犲と猫など。使わしめは皆、仲が良い。
「皆さん、お待たせしました。」
サッと平伏す。
山裾の地で蠢くのは、この国のモノではない。ずっと西、遠くの地。アンリエヌより、やまとへ。
初めは人の姿をしていた。しかし、何があったのか、体を持たず、魂だけで生きている。妖怪でも、幽霊でもない。
祝辺の守によると、はじまりの一族と呼ばれる、人ではないバケモノ。生きるために命を吸い、才と呼ばれる力を持つ。
その才も、『化け王』という王に奪われ、戻ることも出来ず。命も吸えず、朽ち果てた。体を乗っ取るため、多くの魂を食らい続けている。
方方の妖怪の墓場へ侵入し、悪しき妖怪を従え、使う。風見の長を操り、戦、戦。
魂迎湖から釜戸山。妖怪の墓場を抜け、乱雲山へ。悪意を操り、災いを齎したのも、そのバケモノである。
「神は、見守るのみ。妖怪である皆に、託す。」
まさかの、丸投げ。
ところ変わって、祝辺。
「困ったな。」
「神へ。ありのまま、お伝えするとして。」
「はじまりの一族、ねぇ。」
「難しく考えずとも。」
祝辺の守、ニッコニコ。
「そうは仰いますが。」
「風見の者を、押さえれば良い。」
???