17-10 薄まっていても
旧王城地下で暮らす、新たな一族の数が減った。生き残ったのは二割程度。
その大半が宰相に選ばれた若手と、その家族。
「居ない。」
「ウチもだ。」
シアもクアも親ナシに、天涯孤独の身の上になった。アミもソウだが事情が違う。
違うがハッキリと区切りを付けられ、誰も近寄ろうとシナイのは同じ。
「まぁ、そんな気は。」
「だよな。」
「養護施設に入るのかな。」
・・・・・・。
シアとクアが黙って、アミを見つめる。
目は口より雄弁だ。心の声なんて聞こえないが、頭の中でガンガン響く。『ナニ言ってんの、コイツ』と。
「何だよ。」
強がっても、何も変わらない。
「いや、その。」
「なぁ。」
シアとクアが見合い、ムリに笑う。その顔が周囲と同じに見えて、そう感じて倒れるように座り込む。
頽れたアミを気遣い、手を差し伸べる者はイナイ。
「そうだよな。」
小さくなったアミが呟くと、シアとクアが慌てて屈んだ。
新たな一族の寿命が、ほんの少しづつ伸びている。とはいえ百五十年ほど。人類より長く生きるが、新種と違って成長速度は遅い。
旧世代は九十、新世代は百四十を越えた辺りから急に老けだす。その大半が常時臥床状態になり、介護を要する。
天寿を全うするまで要職に就いていたフリツは例外中の例外。
元から健康体だったが殊の外、健康に気を付けていた。
全てはアンリエヌ旧王城地下で暮らす、新たな一族の生活と平和を守るため。
「誰だっけ、前の宰相。フリツ宰相が化け王と交渉して、新たな一族のために組んでもらった予算をさ。」
「不正事件で失脚して、変死したヤツだ。」
「そうそう。アイツの所為でギリギリだった生活を元に戻したの、バルト宰相じゃん。」
「就任の挨拶、覚えてるか?」
「あぁ、覚えている。『アンリエヌの地下宰相として、出来る限りのコトをする』ってヤツだろう?」
すぐさま対立分子を粛清し、政治改革に乗り出す。化け王への謁見を許されたのは、宰相就任から三年後。
つまり、たった三年で立て直したのだ。
「縁は切れていても、バルト宰相と同じ血が流れているんだ。」
「薄まっていても流れているんだよ。」
甥だ、そう遠くない。けれど相手はアンリエヌの地下宰相。近寄る事すら出来ない雲の上の存在。
何を期待しているのか知らないが、好い加減にしてほしい。
「悪いな。」
「エッ。」
シアもクアも、アミを元気づけようとしたダケ。
血は水より濃いと聞いて育てば、何の疑いもなく思うだろう。絶縁しても同じ血が流れてると。困った時は頼れるし、助けてもらえると。




