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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1442/1635

17-9 死ねば終わりだが


『慣れ』とはオソロシイもの。鼻が曲がるホドの悪臭にも、青白くなった顔色にも、ギラギラした目にも動じない。


強くなった? 違う。何も感じなくなったのだ。



時は巻き戻せない。戻せないなら戻れないし、戻れないなら悩むダケ無駄。ドウにもナラナイ。


ドウにもナラナイが、外見も中身も変わってしまったが生きている。死ねば終わりだが生きている。


それが全て。






「アミ。お前、宰相のおいだろう。」


「は? めてくれよ、クア。確かに血の繋がりはあるが、縁は完全に切れている。」






バルトの生みの親は過激派で、ずっと娘を欲しがっていた。双子の妹は一人娘。その溺愛ぶりは相当のモノで、長兄次兄もメロメロ。


放置された三男は当然ように兄と比較され、しつけと称する虐待を受けて育つ。






「そうは言ってもよぉ。」


「シア、お前もか。」






餓死寸前で前宰相、フリツに保護されたバルトは特別養子。養子と実方じつかたの血族との親族関係は終了し、協議または訴訟による離縁は出来ない。


そもそも肉親から虐待を受けていたのだ。両親が逮捕されても、兄姉が逮捕されても知らんり。






「二人とも良く聞け。親父も叔父も叔母も、寄ってたかってアレを虐待していたんだ。特別扱いなんて期待できねぇよ。」






薄情だの冷血漢だの言われても涼しい顔で、『新たな一族ですから』と一言。『甥だ』と言っても門前払い。良くて留置、下手へたすりゃ投獄。


引くしかナイ。






「じゃぁ何で釈放されたんだよ。」


クアに問われ、返答にきゅうする。


「大王の赦免しゃめんを求めて、地上に出ようとしたのにさ。」


シアに返答を迫られ、くちびるを噛む。






保身を図った両親は兄を売る。お仲間も同じように、倅や娘を売った。



どの家門も禁を破り、複数の子を持つ。


理由は簡単。理想や組織の利益のために使い捨てに出来る、決して裏切らない駒が欲しいから。






「ウチの親だけじゃない。シア、クアの親だって釈放されたじゃないか。」


「それは。」


「そうだケド。」






親の組み合わせは違うが兄姉、弟妹が命を落としたのだ。何も思わないワケがない。


旧王城地下の一区画、古い本が乱雑に積まれた倉庫に入ったのも、見つけた小部屋に入り浸ったのも逃げるため。



地下空間、それも旧王城地下で暮らしているのだ。地上と違って逃げ場が無い。捨て駒にされた子の母が、泣きながら子の父を責める。


その姿を見るのも、その声を聞くのもつらくて苦しくてたまらない。



だから黙って抜け出した。抜け出して見つけた秘密の場所で、一時の安らぎを得る。


全てはおのを、己の心を守るため。






「・・・・・・それよりさ、考えようぜ。」


フゥと息を吐き、アミが切り出す。


「考えるって何を。」


「決まってるじゃナイか、シア。分かるだろう?」


「分からねぇよ。何だよ、クア。勿体振もったいぶるな。」






アミ、シア、クアはひたいを集めて相談する。これからドウ生きるのか、誰を頼るのかを。


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