17-8 悩むダケ無駄
旧王城地下倉庫。
古い本が乱雑に積まれた倉庫の奥、本棚の裏に隠された小部屋で息を潜める。青と緑の目を持つ男、赤目白髪の男、赤目黒髪の男。
新たな一族だが空腹に耐えられず、幼い新種を潰して食らった。
「聞こえるか。」
赤目白髪の男、シアが問う。
「兄妹だろう。泣き疲れて気絶した妹を、兄がどこかへ連れて行った。」
青と緑の目を持つアミが答える。
「名は。」
赤目黒髪の男、クアが問うた。
「妹の名はウィ。弟の名はジャド。」
アミ、シア、クアは新たな一族の生き残り。
家族に黙って立入禁止の書庫に潜り込み、探検していたら隠し部屋を発見。おのおの興味を持った本を持ち込み、夢中で読んでいたら騒がしくなった。
新種だと気付くまで時間が掛かったが、鼻につく臭いに助けられたのだろう。バタバタ騒がしくなってから静かになる。
「その兄、エド大王じゃないか?」
シアの言葉を聞き、アミとクアが見開く。
「弟妹は飾りの。」
「化け王に裁かれた大臣。」
はじまりの一族。才と呼ばれる特殊能力を持つ、人と同じ姿をした違う生き物。
支配の才があれば大王に、収集の才があれば化け王に即位。死ねば誰かに受け継がれるとか何とか。
「仲直りしたのかな。」
「いや、正妃腹のは元から。」
「そうそう。」
全ての才を集めた化け王は無敵。
大王、大臣とも腹違いの兄弟姉弟だが、その才を奪って幽閉した。それがココ、旧王城地下空間。宰相が決死の覚悟で交渉し、新たな一族もアンリエヌの民となる。
そう学んだ。
「これからドウする。」
「そうだなぁ。」
「それより、この力。」
新種を食らって直ぐ、体がミシミシと軋んだ。アミは耳、シアは目、クアは鼻から血を流して卒倒。
意識が戻った時、気付いた。体質が変わったコトに。
「アレを食って倒れてからだ。」
変わったのは。
「アレって新種だよな。」
宰相が騒いでいた。
「進化したってコトか。」
オレたち。
バルトは名相と仰がれ、死後も称えられるフリツの倅だが実子では無い。過激派の両親から虐待を受け、餓死寸前でフリツに救われた特別養子。
心身共に健康になると望んで宰相補佐官に就任。
ずっと要職にあるのだ。官僚用の避難所で若手と共に、化け王城からの救援を待っているのだろう。
『新たな一族を守るため』だの『アンリエヌの民として』だの言っているが、化け王こ)びているダケ。
「気付かれる、よな。」
「相手は化け王。」
「隠し通せるワケが無い。」
腹違いとはいえ、実の兄姉に刑罰を加えた化け王である。どんな扱いを受けるか。いや、処刑されてもオカシクない。




