表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
再生編
1440/1598

17-7 大王のため


新種は変異速度と成長速度が早く、暴食だった。にもかかわらず増殖実験が行われ、その数を増やす。


一早く異変に気付いたのは宰相、バルト。速やかに実験を中止しなければ食糧難に陥り、多くの命が失われる。そう訴えるも説得できず、作戦変更。



新たな一族の大半は一生、地上に出られない。その代わり化け王城から、贅沢をしなければ生きられるダケの物資が配給されている。


アンリエヌの民だから。



これからもアンリエヌの民として生きるには、愚かな夢を追い続ける連中から離れなければイケナイ。逃げなければナラナイ。


そのために必要なのは親類縁者でもスパッと切り捨て、安全な場所に避難すること。






「ヴギャァァッ。」


最後まで残ってしまった新種が叫ぶ。




仲間が死んだ。飢えたバケモノに襲われ、食い殺された。きっと、もう誰も残ってイナイ。


他にも居たら力を合わせて戦えるのに。



誰の記憶か分からない。


宰相と呼ばれる老人に、今すぐ実験を中止しろと言われた。なのに話を聞こうともせず追い払い、アッと言う間に大増殖。




「ゾウダ、ザイジョウ。」




宰相は今、どこに居る。あれから姿を見てイナイ。口うるさいのも居なくなった、というコトは逃げたのだろう。


考えられるとすれば、そうだ。特別棟と呼ばれる高級官僚用の避難所。行った事は無いし、この記憶だって曖昧あいまい。けれど、それがドウした。




「ジャマヲズルナ。」




最後の生き残りがにらむのは、はじまりの一族。才


を奪われた王族。エド大王、ジャド大臣、ウィ大臣が血走った目をして立っている。



一度、限界まで喰らわなければ止れない。


やっと落ち着いたエドは弟妹の邪魔にならぬよう、先回りして支えた。増殖した新種はドンドン数を減らし、地下空間に血の匂いが充満。




「ナニガナンデモ、イギノゴル。」




判るさ。どう頑張っても勝てない、助からない。それでも諦めず、死ぬ物狂いで突っ切るダケ。


集めた記憶を辿ったが、どの扉も破壊されていた。



外に出られれば幾らでも、好きなだけ食い散らかせる。外に出られれば、全力を出せるようになれば、そうすれば思うように生きられる。


きっと。




「バナゼェェェ。」




最後の生き残りがエドに投げ飛ばされ、ジャドに体を押さえ付けられた。バタバタ暴れたので膝の関節を砕き、首筋を出す。


全てはウィのため。




「アァァァ。」




心臓が悲鳴を上げる。もうダメだと、助からないと叫ぶ。叫んで喚いて暴れ回って、やっと静かに。


というコトは死んだ、のか。



ココはドコだ。いや、夢を見ているのだろう。大空の下で仲間が手を振っている。思い切り駆け、笑い合って。それから新たな王城を建て、化け王を玉座から引き摺り下ろす。


大王のため。




「・・・・・・ンデ。」




その大王に殺された。なのに大王のため、王弟や王妹のために化け王に挑む?


勝てないのに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ