17-7 大王のため
新種は変異速度と成長速度が早く、暴食だった。にも拘らず増殖実験が行われ、その数を増やす。
一早く異変に気付いたのは宰相、バルト。速やかに実験を中止しなければ食糧難に陥り、多くの命が失われる。そう訴えるも説得できず、作戦変更。
新たな一族の大半は一生、地上に出られない。その代わり化け王城から、贅沢をしなければ生きられるダケの物資が配給されている。
アンリエヌの民だから。
これからもアンリエヌの民として生きるには、愚かな夢を追い続ける連中から離れなければイケナイ。逃げなければナラナイ。
そのために必要なのは親類縁者でもスパッと切り捨て、安全な場所に避難すること。
「ヴギャァァッ。」
最後まで残ってしまった新種が叫ぶ。
仲間が死んだ。飢えたバケモノに襲われ、食い殺された。きっと、もう誰も残ってイナイ。
他にも居たら力を合わせて戦えるのに。
誰の記憶か分からない。
宰相と呼ばれる老人に、今すぐ実験を中止しろと言われた。なのに話を聞こうともせず追い払い、アッと言う間に大増殖。
「ゾウダ、ザイジョウ。」
宰相は今、どこに居る。あれから姿を見てイナイ。口うるさいのも居なくなった、というコトは逃げたのだろう。
考えられるとすれば、そうだ。特別棟と呼ばれる高級官僚用の避難所。行った事は無いし、この記憶だって曖昧。けれど、それがドウした。
「ジャマヲズルナ。」
最後の生き残りが睨むのは、はじまりの一族。才
を奪われた王族。エド大王、ジャド大臣、ウィ大臣が血走った目をして立っている。
一度、限界まで喰らわなければ止れない。
やっと落ち着いたエドは弟妹の邪魔にならぬよう、先回りして支えた。増殖した新種はドンドン数を減らし、地下空間に血の匂いが充満。
「ナニガナンデモ、イギノゴル。」
判るさ。どう頑張っても勝てない、助からない。それでも諦めず、死ぬ物狂いで突っ切るダケ。
集めた記憶を辿ったが、どの扉も破壊されていた。
外に出られれば幾らでも、好きなだけ食い散らかせる。外に出られれば、全力を出せるようになれば、そうすれば思うように生きられる。
きっと。
「バナゼェェェ。」
最後の生き残りがエドに投げ飛ばされ、ジャドに体を押さえ付けられた。バタバタ暴れたので膝の関節を砕き、首筋を出す。
全てはウィのため。
「アァァァ。」
心臓が悲鳴を上げる。もうダメだと、助からないと叫ぶ。叫んで喚いて暴れ回って、やっと静かに。
というコトは死んだ、のか。
ココはドコだ。いや、夢を見ているのだろう。大空の下で仲間が手を振っている。思い切り駆け、笑い合って。それから新たな王城を建て、化け王を玉座から引き摺り下ろす。
大王のため。
「・・・・・・ンデ。」
その大王に殺された。なのに大王のため、王弟や王妹のために化け王に挑む?
勝てないのに。




