17-5 私と共に生きておくれ
ジャドとウィが柱から出された。
血を抜かれ、ずっと逆さだったのだ。酷く衰弱し、プルプルしながら立っている。生まれたての小鹿のように。
「あに、うえ。」
エドに抱き寄せられ、涙を流すジャド。
「血が、たりない。」
エドの腕の中で、ウィが訴える。
感動の再会に水を差すツモリは無い。が、そろそろ限界だろう。エドの顔色も悪いが、ジャドとウィの顔色は真っ青を通り越して真っ白。
「外が騒がしいな。フリツは・・・・・・、もう。」
エド大王が額に手を当て、首を振る。
新たな一族は人類より長く生きる。とはいえ旧世代は百年、新世代は百五十年ほど。
健康に恵まれていたフリツは高年になり、特別養子を迎えた。天寿を全うしたのは、その子が史上最年少で宰相補佐官になった年。
因みに死亡したのは職を辞した翌日。心身共に健康になった倅は望んで、父の遺志を継ぐ。
倅の名はバルト。職業、アンリエヌ地下宰相。
「宰相は避難所に居ます。外で騒いでいるのは、新たな一族が生み出した新種。直射日光には耐えられませんが、対策をすれば日中でも出歩けるトカ。」
カーの言葉を聞きエド、ジャド、ウィが見開く。
「なら、なぜ外に出ない。」
エドが問う。
「閉鎖されているからです。」
ニコリ。
「何を糧に。いや、まさか。」
「その『まさか』ですよ、兄上。」
エドは悟る。己に課せられたのは新種の片付けと、安全な場所にいる生き残りを導く事だと。
バルトは優秀な者を選び、二等避難所に入れた。その家族と共に。
高級官僚用の避難所だが、上中下で言えば中。とはいえ強固で、化け王城からの配給もある。
「新種の血に毒は、依存する事は。」
「依存性は無いでしょう。食性が変わる可能性は有りますが、適量を配給します。ご安心ください。」
血を啜るダケでは生きられなくなるのか。まぁ、今でも十分バケモノだ。
才を奪われた王族に存在価値があるとは思えない。けれど、それでも生かされているのは父王の御蔭。
我らを生かすことを条件に、何かを受け入れ為さったのだろう。
「分かりました。お引き受けします。」
「兄上!」
「何を。」
「ジャド、ウィ。私と共に生きておくれ。」
はじまりの一族で才を持つのはカーだけ。生き残った王族はエド、ジャド、ウィ。他は新たな一族。
もし才を奪われていなくても、大王は化け王に敵わない。
歴代化け王に守られているのだ。許し無く立ち入れば、いや近づいたダケで命を失う。それが化け王城。
化け王城に入る事は無いだろう。
旧王城地下で、このまま暮らすのだ。それも良い。けれど、不安で仕方がないのだ。
「はい、兄上。」
ジャドとウィが見合い、頷’(うなず)く。
「では、参りましょう。」
カーは兄姉を新種がいる場所へ移し、化け王城に戻った。旧王城地下から新種が消えるまで、時が掛かるから。




