17-2 無条件で守るのは
こうなる事は最初から分かっていた。だから危険な事態に発展する可能性があると、新種が従順だとは限らないと忠告したのだ。
疎まれても蔑まれても諦めず、何度も何度も。
「バルトめ! 知っていたな。」
反対されたのに強行したのは自称、革新派。
「先王が御存命なら。」
アンリエヌの滅亡は必至。
「ベン大臣が御存命なら、エド王も。」
引き籠らなかった?
「ジャド大臣、ウィ大臣を御救いしよう。」
ムリ無理、止めとけ。下手すりゃ死ぬよ。
無駄に大きかった旧王城を支えるため、地下空間の壁も柱も丈夫で立派なモノばかり。耐力壁を囲うように作られた部屋は、その大半が王族専用。
エドが籠城しているのも、ジャドとウィが塗り込められているのも強固な壁で守られた一角。
はじまりの一族、それも王族だ。そう簡単に死なない。
「いつまで続くんだ。」
新種に食い殺されるまで、かな。
「ジョド王、どうか我らに力を。」
先王が守ったのは正妃との間に儲けたエド、ジャド、ベン、ウィだけ。
厚い壁に守られている倉庫に逃げ込んだが、その全てに生存に必要な物資、設備があるワケでは無い。
それらが整備されていなければ、もって三日。
「こんな事なら。」
「余計な事を考えず。」
化け王に飼われていた方が良かった。
空気浄化装置と生存に必要な物資・設備が整備されていても、二週間以後の生存は望めない。
旧王城で暮らす全ての民を避難させられる、そんな場所があればよかった。けれど高い建設費と維持費を調達できず、エド王は断念する。
「もっと勉強すれば良かった。」
「あの時、諦めなければ今頃。」
後悔先に立たず。
厚い壁に覆われていても、いつか必ず破られる。小さな穴が大きくなり、飢えた新種が雪崩れ込む。
そうなれば逃げられない。
「私は無力だ。」
才を奪われてから今まで、何をしていたのだろう。
「生きているのも全て。」
父王が化け王に降ったから。
化け王は大王の影。
そんな話を真に受けて、幼少期から蔑んでいた。アンもサンも、サイもスイもディもカーを王と認めず死んだ。
全ての才を収集する。それが平和を愛する歴代、化け王の悲願だったのだろう。
カーはエンを逃がしてから追跡隊に志願し、他の隊員から才を奪って突きつけたのだ。現実を。
「いいや、違う。」
アレは言っていた。『化け王が守るのはアンリエヌの民。国は民を守るために存在する、強い器でなければナラナイ』と。
「父上。」
はじまりの一族、その王族というダケ。そんな生き物に一体、何の価値があるというのですか。
カーが無条件で守る親族は、はじまりの一族はエンとルーだけ。
いつ看取ったのか分からないが、エンはルーの隣で眠っている。ユリの花を手に。




