17-1 決着がつくまで
新章スタート!
ジロが運命の相手と出会い、婚約した。その知らせはブランにより化け王、カーに届けられる。
ホッとした次の瞬間、齎されたのは強い肉食性を持つ新種の誕生報告。新たな一族は共食いした事で、その身に呪いを宿す。
これダケでも厄介なのに冥界の王者、ハデスにケチョンケチョンに打ち負かされた最高位の堕天使が攻めてきた。その名はルシフェル。
悪魔の敵、化け王を配下にすれば冥王、ハデスに勝てると思ったらしい。どうする、化け王。
再生編、はじまります。
ジロが運命の相手と出会い、婚約した。その知らせはブランにより化け王、カーに届けられる。
トントン。
「急ぎ、申し上げます。」
執務室に入るなり、ネージュが一礼。
「新たな一族が新種の繁殖に成功しました。成長速度が早く、その個体数は全体の三割。」
アルバが嘴を開けたまま、固まった。
「食性は。」
カーが問う。
「強い肉食性です。交尾行動中の雄が雌に食われ、出産後は子に食われます。」
「エド大王は今、何を。」
「旧王城地下、玉座の間から御出になりません。」
「そうか。」
エドはジャドとウィが埋め込まれた柱に抱きつき、声を殺して泣いた。やっと出られたのに、動けるようになったのに、外にはカマキリのような新種がいると。
気の毒だが大王だ。嘆く前に動け! 何とかしろ。
新たな一族は、その数を減らし続けている。新種が大半を占めた時、王政を廃せと言い出してもオカシクない。
「宰相は。」
「新種の繁殖実験が始まる直前、将来有望な若手を集めて避難所に入りました。」
その家族も含めて。
「残りは新種の食料か。」
「はい。」
ボコボコ生まれる新種には、残念ながら知性は無い。常識を説いても右から左と抜けてしまう。そんな生物が増殖すれば当然、治安が乱れる。
旧王城へ続く道は現在、一本のみ。門扉が開く事は無い。にも拘らず激しく叩き、助けを求めて叫ぶ。
その声が、思いが届かないと分かっていても。
「アルバ。」
「はい、カー様。新種が大多数を占めるまで、遅くても一月でしょう。処分なさいますか。」
「いいや、暫く様子を見よう。」
才を奪われ、血を抜かれても王族。その肉を食らえば新たな力を得る。なんて事は無いが、そう思われても不思議はない。だから安全な場所に逃げ込んだ。
生きていれば、いつか迎えが来ると信じて。
アンリエヌを治めるのは大王と化け王。大王が居なくても化け王が、全ての才を収集なさったカー王が御坐す。
非常口と処刑場を一体化し、旧王城地下を閉鎖。上物を処分し、アレらを幽閉。
「最後まで勝ち残った者が孤独に死ぬか、知能を得た者が制止するか。」
何れにせよ新たな一族が、その数を減らす事に変わりはない。
「リュンヌ。」
「はい。ご報告します。」
離宮地下で暮らす新たな一族は、その数を少しづつ増やしている。旧王城で暮らす一族と違って、地上で暮らす民を蔑み、侮る事はない。
昼行性か夜行性というダケで、同じアンリエヌの民だから。
旧王城で新種の繁殖実験が始まると、直ちに遺憾の意を表明。本気で対策を検討し、断絶宣言。
避難所からの声明発表は無いが、恐らく受諾するだろう。
「旧王城から臣が戻り次代、完全封鎖する。」
化け王城から避難所へ物資を送るが、新種との接触は遮断。
不自由な思いをさせるが、新種に食い殺されるよりは良いだろう。




