16-87 やっと会えたね
ユタと嚴が手を繋ぎ、ジロの前を歩く。『仲が良いな』と思いながら黙ってトコトコ、ついて行くと。
「あっ。」
織った布が風に飛ばされ、手を伸ばす。けれど掴めず、フワリと落ちた。
「どうぞ。」
息をするのを忘れた。
やっと会えたね。ん、いきなり何を。そうだなぁ。映画を見て、お茶を飲みながらって違ぁう! ここはアンリエヌじゃない。やまとだ。
シッカリしろ、ジロ。
先ずは自己紹介。それから握手して、エッ。てってっ、手を繋ぐ? 良いのか。本当に良いのか、ソレで。
「はじめまして。ジロです。」
ニコッ。
「あっ。」
どうしたの、胸が。
「美しい布ですね。」
ドクン。
「あの・・・・・・。」
ポッ。
「あっ。ありがとうございます。」
ドクン、ドクン、ドクン。
「ジロさんは、どちらの。」
どうしよう、何を言っているの。
「乱雲山から来ました。」
カー様、どうしよう。胸がイッパイで、辺りがキラキラして見える。これが恋、恋なんだね。
「乱雲山?」
「はい。」
アンリエヌ経由で来ました。
「あの、ありがとうございます。」
お礼、二回目。
「ナタです。」
ズキュゥン。
若い二人は見つめ合い、そっと頬に触れる。そして熱い抱擁を・・・・・・とはナラナカッタ。
「宜しければ、お送りします。」
「はい。お願いします。」
オイオイ、待て待て。鎮野社へ行くんだろう。
ほれ見ろ、ジロ。ユタと嚴がポカンとしているゾ。
「ナタ、どうした。」
鎮野の社の司でナタの後見、紅が声を掛ける。
「顔が赤いぞ。」
耳まで赤くなった。
「はじめまして、ジロです。」
お父さん。ナタさんとの交際を認めてください。結婚するまでは指一本、触れません。アッ、手を繋いでマスね。あはは。
タナさんに幸せだと、ジロと結婚して良かったと思ってもらえるよう努めます。うん、通じないな。やまと言葉で話さなきゃ。
「ん、うん。ん?」
手を繋ぎ、頬を染める二人。どう見てもラブラブ。
「ナタさん、好きです。幸せにします。」
「はい。」
ウットリ~。
「待て待て、ナタ。タエとタラに許しを、だな。」
紅が慌てる。
「母さんも父さんも、きっと認めてくれるわ。」




