表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1429/1598

16-84 呪い、発動


とつ守に下ろしてもらい、トコトコ歩いて守犬の小屋へ戻る。




「あら、明るい。でも冷えるわね。」


ブルルッ。


「戻りましょう。」


據據きょきょを抱っこして眠れば、きっと朝までグッスリよ。






よるが眠りについた頃、山守の村では。



「逃がさんぞ。」


血潮が顔に、ビシャァとかかる。


「助けてぇぇ。」


グサッと胸を刺され、息絶えた。




呪い種を頭に、それも脳髄のうずいに埋め込まれたは考える事を放棄した。おのの意志に関係なく不安を増幅させ、心を操って殺し合わせる事に耐えられなくなって。




「山守の民は、生きていてはイケナイ。」


張って逃げる男の頭に、まきの断面を叩きつける。


「これまで、ごめんなさい。」


石器を首筋に当て、ブスッと切った。




山守の民は山守社やまもりのやしろから祝が居なくなって、人のおさでもある社の司から『もう祝を選ばない』と言われて不安になった。




「泣くな、走れ。」


弟妹の手を引き、幼子おさなごが逃げる。


「もう直ぐだ。」


他からさらわれ、とらわれていた子が走る。






このまま生贄いけにえ人柱ひとばしらも選べなければ、いつか己がなぶり殺される日が来る。そうなる前に他から攫わなければ、いつ殺されてもオカシクナイ。


なのに足りない。



つわものが居ないから攫えるのは嬰児みどりごか幼子。好きに使える若いのは攫えないから、育ちそうなのを攫う。


攫っても攫っても思うようにナラナイ。思うようにナラナイのは嫌だ、いやだ、イヤだ。






「逃がすなぁ!」


他の村でイロイロやからし、山守に移り住んだ破落戸ごろつきが叫ぶ。


「捕まえろぉ!」


他の村では出来ない事が出来ると聞き、山守を訪れていたケダモノが叫ぶ。






山守で生まれ育った民は、そう多くない。殺し合って死んだから。残っていたのは、その生き残り。


全ての嬰児や幼子が育ったワケでは無い。他から来たのに嬲り殺されたり、言えないような事をされて死んだ。



中には山守を捨て、山越に逃げようとした子も居る。けれど捕まり、生贄や人柱にされる。そうして殺され、おにになった。






「思ったより早かったね。」


オビスが微笑む。






山守の村長むらおさは女を見ると、それが幼子でも襲った。襲ってはらませ、どんどん産ませた。


産ませたのに何もせず、泣かずに生き残った子だけ引き取った。



引き取られても食べ物を貰えず、弱って腹がふくれる子。足も膨れて歩けなくなった子。そんな子を生贄や人柱にして言う。


山守のために死ね、と。






「死に絶えてしまえ。」


様子を見に来たカヨが、呪いの言葉を吐き捨てる。






山守の男は皆、女の敵。生かしておけない。


嬰児や幼子は残したが、親と同じケダモノに育つ。だから呪った。呪って呪って、やっと出会ったのがオビス。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ