16-83 良い夢を
八と觸が入れられた祝辺の獄は、結と往が力を合わせて作った特別製。
脱獄不可能、と思われていた。
「エッ。」
結が飛び起きた。
「ヒッ。」
往が目を覚ます。
あの獄から出た? どうやって。
固く閉ざされているから、外からドウコウする事は出来ない。内から入らなければドウにもナラナイ。内から入れるのは祝辺の守と、守に仕える守犬だけ。
緤は八を酷く嫌っているし、晄が認めない。となると據據。闇に強い守犬だが・・・・・・憑か。
けれど、それは憑が考えた事では無い。他の守に頼まれたのだろう。
「今、同じ事を。」
「考えたな。」
二隠が見合い、頷く。スッと立ち上がり向かったのは、ひとつ守の部屋。
夜中だが緊急事態。早急に対策を練らなければ祝社の悪戯っ子、ふたつ守とみつ守に気付かれてしまう。
「どちらへ。」
夜勤担当、晄がニコリ。その傍らで緤が尾を振っている。
「用足しに。」
連れションです。ほら、夜中だし。
「そうですか。では、お早く。」
ゴメンごめん、漏れちゃうよね。
「この先に居ますよ。ふたつ守とみつ守、とつ守も。」
エッ!
睡魔に負け、寝る前に出せませんでした。結果、尿意に勝てず付き添いを依頼。
依頼されたのは鎮森の民に寄り添っている、とつ守デス。
「良い夢を。」
とつ守に手を引かれ、自室に到着。
「ありがとう。」
みつ守がニコリ。
「お休みなさい。」
ふたつ守がペコリ。
仲良くトコトコ入って、毛皮を被ってクルンと丸まる。そのままスヤァ。
「こんばんは。」
ドキッ。
「ひとつ守は今、清水の前で月の光を浴びています。暫く戻りませんよ。」
何も言わなくても通じ合う、それが祝辺の守。なワケが無い。ドコから漏れた、いや違うな。誰が何を見て、どう伝えたのだろう。
「ありがとうございます。」
結と往が一礼し、静かに立ち去る。
「さて、お次は。」
とつ守が呟き、仔犬を抱き上げた。
「夜更かしはイケマセンよ、憑。」
人の守は一人だが、隠の守は多い。
数多いる守を束ねるのは、真名を捨てた十の隠。中でもオソロシイのは草木の声が聞こえ、鎮森の民に寄り添うとつ守。
「・・・・・・クゥン。」 キズカレタァ。
どうしよう、気付かれた。どんな顔をして会えば良い。ってイヤイヤ、よく考えなくても今は仔犬。尻尾を振って頬でも舐めれば。
スイマセン、もう寝ます。




