16-81 自宅警備員です
祝辺と山守に連なる御山を守る、守り続けるために強い力が要るんだ。だから祝の力や他と違う、強い何かを持つのを攫った。
攫って調べて使えなければ山守に渡し、使えるのを祝辺に迎え入れる。全ては祝辺の、弱くなった継ぐ子を強くするため。
強い守を残すためにした事。
「どうして。」
幾度も幾度も獄に繋がれ、それでも諦めずに探し求めた。その末がコレか。
「おや、その声は。」
確か十三代、似た力を持つ・・・・・・。
「久しいな、觸。」
あぁ、思い出した。八だ。
また何か遣らかしたのか。この獄に入れられた、となると殺し。それも攫って殺したな。遣り口が汚いダケで見込みは有るんだ、見込みは。
トタトタトタトタ、スッ。ジィィ。
「あぁ、憑か。」
ドキッ。
「據據だったか、その犬。」
プイッ。
「引き籠りが見張りとは、フッ。」
「万が一に備え、心を用いて守っているのだ。」
憑は三十三代、祝辺の守。獣に乗り移る力を生まれ持つ引き籠り。ではなく、祝社から決して出ようとしない自宅警備員。蛇見出身。
自室から出る時は守犬、據據に憑依する。
據據は役職名。
その昔、初代が熊を見て動けなくなった時に救われた恩を返すため子子孫孫、高い闇耐性を持つ個体が憑に仕えている。
祝辺の守に選ばれたのは憑ではなく、蛇使いの妹だった。
祝辺の決定に異議を唱えようと、蛇見の使い蛇が社に集結。ニョロニョロに囲まれウットリする継ぐ子を見た社の司が頭を抱え、禰宜と祝の三人で話し合う。
その結果、選ばれたのが憑。
蛇見の社の司は憑を尋ね、言った。祝辺の守に選ばれれれば外に出ず、ずっと社の中で暮らせる。それダケではナイ。
目に映る物なら遠くても、思うように動かせる力を生まれ持つ三十代、撼。見える所に居る人へ、思いを伝える力を生まれ持つ三十一代、念。人の目を眩ませる力を生まれ持つ三十二代、妖が後見になると。
「目に見えなければ何も出来ない、あの三隠に使われているダケではないか。」
確かにソウだが、その三隠が力を合わせると手強いゾ。
「その犬だって、ほら。」
觸が據據に闇を伸ばし、心の隙を突く。ハズだった。
「クワァァ。」
欠伸をし、寝そべってジロリ。
據と憑の出会いは蛇見から山守、祝辺へ向かう道中。鎮森に入って直ぐ。
熊の前で動けなくなった仔犬を見つけ、乗り移って後退り。木陰に隠れてからタッと駆け、憑の膝の上に乗ってから出た。
名無しだった初代に據と名づけ、守犬として飼う許しを得た。育った據は闇耐性を持つ守犬と契り、玉のようにカワイイ仔犬を授かる。
「ナッ。」
觸は知らなかった。己の闇を弾く犬が、こんなに近くに居た事を。
「今からでも遅くない。その犬、コチラへ寄越せ。」
「断る。八、觸に気を付けろ。」
そう言うとクルンと尾を向け、トタトタ歩き出した。
「待て! 待ってくれ。」




