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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1424/1599

16-79 叱られる前に


鎮野しづめのの社の司には木の声が聞こえ、禰宜ねぎには風を操る力がある。二人を動かしたのは強い先見の力を生まれ持ち、鎮野社しづめののやしろに守られている娘だろう。



あのおにが狙うのは山守の民。その隠を八から守ろうとしたのは人だが、あの力。どう考えても人のモノとは思えない。けれど守った。


となると鎮野の誰かが望んだか、これから望まれるか。



いづれにせよ手を出せば切り刻まれ、しばらく動けなくなる。鎮野を怒らせるとコワイからな。


も気付いたのか、気を失ったのか大人しくしている。






「せっかく外に出たんだ。残り、頼むよ。」


薪割まきわりは重労働。けれど『非力な隠なので』とか、『白魚のような指が』なんて言いたくても言えない。


「はい。お任せください。」


寒いのは嫌なので、手が震えても遣り遂げます。






とつもりが八を見つけ、かついで戻ったのは夜。他の守なら十中八九、谷底に落とされている。そんな時間だ。



「ありがとう、ズビッ。ございますぅ。」


八が鼻をすすりながら、とつ守に感謝する。


「八。」


「ヒャイ。」


喰隠くおへ」


「いぃやぁぁぁ。」


頭をブンブン振りながら髪をむしり、転がるように駆けだした。


「待て。」


それを止めたのはすい


「ドコへ行く。」


薪割りに精を出し、キレイに積んで戻った隠の守はフラフラだった。


「目まで疲れさせる気か。」




気分が高揚しているのか、それとも力がみなぎっているのか。睢の目がギンキンにえている。


睢は三十六代、八は十三代。同じ祝辺はふりべの守だが二十三代も離れている。なのに、そんな隠を見る目ではない。




「ヒィィィ。」


全身が痙攣けいれんし、四肢ししを突っ張らせている。意識はあるようだが、これは長引く。


「喜べ、運んでやる。」


八の襟元をグイッと掴み、睢が冷たく微笑む。




いつもナヨナヨとしている睢が、ドスのいた声を出したのは久しぶり。八が目で『止めて』と訴えるも、止められる隠は居ない。


このままズルズル引き摺られ、祝辺のひとやに放り込まれるだろう。




「こっ、こわい。」


ふたつ守が怯える。


「叱られる前に戻ろう。」


みつ守が震える。


「そう為さい。」


「ヒッ、よつ守。」




ふたつ守とみつ守が背筋をピィンと伸ばし、ニコッと笑う。


急に好い子になった理由は一つ。よつ守は物静かだが、怒らせると怖いから。




「おやすみなさい。」


「また明日あした。」


ペコリッ。




トタトタ駆けて自室へ戻る二隠。その後ろ姿を見送った人の守が、睢に引き摺られる八を睨みつけた。




「たすけ」


「断る。」


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