表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1423/1601

16-78 何の事でしょう


地割崖の前で別れを告げ、鎮野しづめのへ向かうジロを見送ったオビスは山守を目指す。






「ふぅ。」


め、まだ凝りぬとは。


「アレが欠けて困る事は無い。」


うんうん。




祝辺はふりべの外れ、鎮森のきわに建つ祝社はふりのやしろ。その近くでカンカンと雑木を切り割り、乾かすために並べるおにがいた。


とつ守である。



草木の声が聞こえるおには、身近に緑があれば安定する。よって精神操作系の力は効かない。


つまり、八の天敵。




「とつ守、よろしいのですか。」


重ねた布で頭から頬まで覆い隠し、木漏こもれ日を避けるように近づいた隠が問う。


すい、珍しいな。どうした。」






睢は三十六代、祝辺の守。力を込めた紙を三つ折り、飛ばす事で遠くを見る力を生まれ持つ。


出掛けなくても見たいモノを見られるので、基本的に祝社から出ない。



長年、室内で過ごしてきた反動か。日光に強い反応を示すようになった。とはいえ森の中や曇天どんてんなら、その挙動を不審に思われるダケで済む。






「八が許し無く、また。」


人ではなく隠、それもバケモノに手を出したのでしょう。フッ、転がってマス。


「そうだな。」


バケモノに手を出すとは。にしても、そのバケモノを救ったのが人。それも強い何かを持っていたトカ何とか。


「アッ。」


切られた。


「何だ、まだ追っていたのか。」


「はい。けれど、もう追えません。」




何も言わずに飛び出した八が幾日いくにちも戻らない。なんて事、珍しくも何ともナイ。けれど気になって紙を折り、思い切り遠くへ飛ばした。



アレを見た時は驚いたよ。


クルンと曲がった角に鋭い牙、赤い顔に白い髪。ギラついた目。生きた人を襲い、甚振いたぶりながら食らったのだろう。ソウでなければアァはナラナイ。


オッと今は、それよりも。



「鎮野、鎮野が動き出しました。急いで向かいましょう。あの力、強い力を奪われる前に。」



何を言っている。確かに強い何かを感じるが、人にも隠にも扱えぬモノだ。奪う、奪われるという話では無い。


なのに揃いも揃って、あぁ情けない。




「ヒッ、何を。」


頬被ほおかぶりを枝に取られ、大慌て。


「睢、良く聞け。」


「聞きますから返して! 目が、肌が焼ける。焼けてしまうぅぅ。」


男でも隠でも、白く美しい肌を守りたいんです。違う、そうじゃない。いや違わないケド、嫌なモノは嫌。


「見た事、全て」


「忘れます。忘れますから、お願いしますぅぅ。」


ガタガタ、うるうる。




とつ守が手を伸ばすと、枝がスッと下がって布を落とす。それを受け取り、睢の頭に乗せた。数秒後、真っ青を通り越して真っ白だった頬に赤みが戻る。




「紙を切ったのは」


「何の事でしょう。」


キリリ。


「それで良い。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ