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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1422/1604

16-77 うん、うん、そうだ。そうしよう!


山守と山越の民を消す。そう聞いたジロの頭に浮かんだのは、小さな獣を狩る罠の張り方を教えた山越のチビッ子たちの顔。



山越の村長むらおさ狩頭かりがしらも、他の人も山守を嫌っていた。


中には山守にさらわれ、山越に逃げ込んだ人も居る。生まれ育った地に戻っても、また攫われてしまう。そう思うと怖くて戻れない。


そう言って泣く人も居た。






「なぁ、オビス。山越は平たい地が少ないんだ。だから食べ物を育てるのも難しくて、それでも諦めずに生きている。」


「そう、なんだ。」


「山守は祝辺はふりべからイロイロ貰えるが、山越は何も貰えない。だから田や畑で食べ物を育てながら、狩りや釣りをして暮らしているんだよ。」


「そう、だよね。」




ずっと、ずっと『山越も』って思っていた。けれど山越も山守の民に苦しめられて、それでも諦めずに暮らしている。


でも中には悪い人、居るよね。



うん、待って。


悪い人はドコにだって居るよ。山守から山越に移り住んで、山越の民と力を合わせて暮らしている人だって居ると思う。



うん、そうだよ。


だからさ、山守の民を片付けたら山越を調べよう。山越に行って、みんなで見て聞いて確かめるんだ。



ジロさんが言うんだ、まことだよ。


それにさ、もし悪くないのに片付けたら、きっと悲しませちゃう。また会った時、笑って話したいよね。



うん、うん、そうだ。そうしよう!




「山守の民は調べなくても『悪い』って分かるから、ザシュッとサクッと片付けるね。山越の民はシッカリ調べて、『悪い』って思ったのダケ片付ける。」


そう言って胸を張るオビスの頭を優しく撫で、ジロが微笑む。


「そうか。偉いぞ、オビス。」


「ありがとう。」




ちょっぴり照れるオビスを抱き寄せ、ひたいに優しくキスをした。驚いたのだろう。パチクリと瞬きしたが、直ぐにニッコリ笑って抱きつく。




「ジロさん、これから鎮野しづめのへ行くんだよね。」


「そうだよ。」


「じゃぁ、地割崖のトコまで送るよ。いい、よね。」


「ありがとう。とっても嬉しいよ。」






地割崖までソコソコ離れている。だからノンビリ歩きながら、イロイロな事を教えた。途中で見つけた獣の狩り方、さばき方。食べ方や皮の使い道などナド。



理由は分からない。けれどオビスは捌いて焼いた肉を食べるたび、顔色が良くなった。もしかすると心も満たされなければ、腹も満たされないのカモしれない。



生肉にらいついていた時は、どれだけ食べても満たされなかった。キノコを食べて痺れたり、腹をくだして動けなくなった。


そんな話を聞く度、泣きそうになったが何とかこらえる。





「わぁぁ、まん丸だ。」


夜空を見たの、久しぶり。


「キラキラだ。」


手を伸ばしても届かない。


「あっ、流れ星。」


お願いしなきゃ。






焚火たきびの近くに寝転がり、楽しそうに夜空を見るオビスの隣でジロは願う。オビスが心穏やかに、幸せに暮らせますように、と。


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